Q2はQ-P?

先日、M10-Pのセンサークリーニングの為、久しぶりにライカ銀座へ足を運んだ。平日のせいかサービスもショップもお客は私ひとり。顔見知りのスタッフとしばしQ2談義。初めて触った印象はかなり洗練されてM10-Pに感じた高い完成度。インターフェイスもM10-Pと同じになってボタンもすっきりで操作性もすこぶる良い。余談だがデジカメには付き物だったゴミ箱アイコン、これを無くしたのは目から鱗でライカの慧眼。

肝心のQ2だが少々大きくなったレンズのスペックはQと同様、デジタル部は約4700万画素のセンサー、防塵防滴仕様、進化したEVF、その他細かい点ではボタンのM10-P化、メインスイッチ、マニュアルフォーカシンングリングも感触が良くなった。細かいところで全てがブラッシュアップされた。スタッフとの会話で結論としてこのQ2が実は真のPではないの?と。

仕事柄5000万画素クラスのデータの価値とハンドリングの大変さは分かっているがQのメイン用途であるスナップシューターにとって4700万画素が必ずしも必要とは思えない。PCや周辺機器にもかなりの負担増になる。これはプロが余裕を持ったデータ量が欲しい時、あるいは繊細で緻密な描写の画像が欲しい時、それらを過酷な条件下でもトラブル無く目的が達せられること。これこそプロフェッショナルモデルが必要としてるスペック。まさに今回のQ2がそうだ。

ついでに75mmクロップの話も出たが、28mmレンズでの75mmクロップはただ撮れるということだけで本来のレンズ描写とは別次元の話。その場で75mmの切り取りでSNSにアップするユーザー向けで今時の風潮にライカも合わせたということ。そのスタッフとも本来の焦点距離が持つ意味としては否定的ということでは同意見だった。

欲を言えばズミクロン50mmクラスのスペックで同じレンズ一体型のQの標準レンズバーションを出してくれたら75mmクロップも賛同できる、と。Qの28mmベースの35mmクロップ、Qの50mmバージョンで75mmクロップ、28と35で広角系、50と75で標準系。これが自然で理想的なクロップ。ということでここでも同じ意見で大いに盛り上がった。

Qの標準レンズバーションを出したらかなり売れると思うのだがライカ社の担当殿、如何かな?

LEICA Q-P

LEICA Q-P

焦点距離年齢35歳?

最近になって35mmが妙にフィットしている。年齢=焦点距離の理屈から言えば35歳!元々ズミルックス派で50mmも35mmも歴代のズミルックスにしか関心は向かなかった。ところが今になってズミクロンの35mm、しかも現行のひとつ前のASPH.モデル。レッドスケールに惑わされて限定モデルを手にしたが出番はズミルックスに奪われていた。

それがここのところなぜか積極的に使い始めた。どんな心境の変化かは自分でも分からないがこのレンズの開放での驚くようなシャープさとボケの美しさ、目の前の光景をぼんやり眺めているような自然な画角、ピントの合った部分と合わない部分のイメージがヒトの距離感の感覚に近い感じ?加えてf2という程よいピントの歩留まり、ライカらしいコンパクトさなど今になってこのレンズを再評価している。

軽くてコンパクト、かつ目立たず、写りは伝統のズミクロンという一番ライカらしい組み合わせ。やはり35mmはレンジファインダーに最適だと実感した。この歳になってライカを使い始めた頃の原点に戻った感覚。35歳ならばライカレンズと言えばやはりズミクロンだ!などと青臭いことも言えてしまうのだ!

LEICA M10-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

LEICA M10-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

憧憬

雑誌Penの最新号での操上和美氏の使い込まれたブラックペイントのM4とスーパーアンギュロン!
自分がこのレンズに痺れたのがまさにこのスタイル。「スーパーアンギュロン」ライカフリークにとっては特別な響きだ。

初代スーパーアンギュロン(SA)はf4でシュナイダー社製のLマウントレンズ。当時のライカは21mmという広角レンズを生産する技術を持っていなかった。二代目のSAからF3.4、Mマウントとなり、対称系レンズ構成の独特の写りで多くの写真家が傑作を生み出した。この二代目SAはM型ライカが一番輝いていたM3時代の超広角レンズとして当時としてはプロの写真家の間では特別の存在だった。特にコダクロームとの相性は周辺光量落ちと独特の彩度、墨が混ざったような色合いはこのレンズの特性と相まって独自の世界が表現されていた。

自分の最初のライカはバースデイライカのM3。当時はズミクロン50mmを手にするだけで精一杯。このレンズには手が出なかった。ファーストコンタクトは往年の写真家たちの過去の作品。それらを通してこのレンズの存在を知った。作品とは別にレンズデザインの良さが抜きん出ていた。専用フード12501と専用外付けファインダーSBKOOを装着した姿は理屈抜きに格好良く、とにかく憧れのレンズだった。

その後、M8、M9の時に初めて使用したが後玉の関係で内蔵露出計が使えず、かつ周辺の色被りも酷く、マニュアル露出でモノクロといういかにも玄人的な扱いでしか撮影できなかった。そこがまた良かったのだが使いづらいことは確かだった。その後は手放してしまい、常に気になる存在ではあったが今ではなかなか良い玉に出会えなくなってしまった。そして二代目SA以降その名は復活しなかった。

2011年にリリースされたこのスーパーエルマーが実質の後継レンズとなった。ライカもその謳い文句でこのレンズを紹介している。現代のパースペクティブなシーンではもはや21mmは広角レンズとして物足りない印象も否めないが光のコントラストが強くドラマチックなシーンが多くなる今の時期には「広角の標準レンズ」としてピッタリだ。ライカの21mmは「SAへの憧憬」が常に自分の中に内在するスペシャルな存在だ。

LEICA M10-P / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 ASPH.

LEICA M10-P / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 ASPH.

not 28mm but 24mm?

Qのレンズ前面のネームリングには「SUMMILUX 1:1.7 / 28mm ASPH」と記されていて焦点距離が28mmということが分かる。何を今更だが実はこのQの28mmレンズの画角が限りなく24mmに近いのではないか?今Q-Pを使用しているがQの頃から何となく腑に落ちないと感じていた。

自分の場合、仕事で使用するレンズが「TS-E 17mm f4」と「TS-E 24mm f3.5」がメインでこの2本でほぼ80パーセントの仕事をこなしている。したがって24mmの画角は体に染付いているつもり。24mmと28mmでは広角レンズの中でも広角扱いと標準扱いと言えるほど目的が違う。焦点距離の数値での差はたった4mmだが対角画角で言えば約9度も違ってくる。

Qの28mmは広角の標準レンズのつもりで被写体に向かっていたが28mmよりも感覚的にもう一歩前に出なければしっくりこない。最短付近でも寄るとパースがキツい。ポートレイトで顔の寄りカットなど広角然としていて歪みも無視できない。しかし、24mmと思えば納得。脳内ではSUMMILUX 1:1.7 / 24mm ASPH.として付き合っても悪くはないがQのキャラクター的にはやはり28mmの方がしっくり来る。

LEICA Q-P

LEICA Q-P