HASSELBLAD XCD30mmF3.5

ハッセルブラッドXシリーズのXCD30mmF3.5。2017年にリリースされ7年、レンズとしては最新ではないがそれほど古くもない。ライカを長く使ってきたので7年なんてまだまだ生まれたてでライカレンズならば間違いなく最新レンズだ。このレンズ、MTF性能曲線を見ればとんでもなく優秀なレンズにもかかわらず地味な存在なのか所有しているユーザーは少ない。

中判専用なので30mmでも35mm換算だと24mmになる。その為、肉眼で見た広さ、奥行き感など24mmらしくない?自然な描写をする。さらにレンズデザインと重量バランスが素晴らしく、ピントリングのヌメリ感も程よく残っていて真面目に作られた金属製のレンズフードも良い。

この手のフィーリングには個人差があるので人それぞれだがいわゆるプロダクトとしての機材から伝わる「撮影体験」というものは確かに存在し、撮影時のメンタルに影響を与えているのは間違いない。少なくとも自分には影響がある。

しかしこのレンズ、まだたった7年で最新?にもかかわらずXCD21mmF4と共に昨年生産完了となった。他にXCD120mmF4 MACROも生産完了でどのレンズも非常に優れたレンズだけに残念だ。新しいVシリーズやコンパクトな28Pなどラインアップが増えていくことは良い事だが初期の真面目に光学性能を追求していたレンズがラインアップから消えていくのは何とも寂しい限りだ。

余談だがX2Dの一億画素は本当に必要か?と問われることが少なくないが画素数と諧調と色づくりには相関関係があると感じている。数値的に証明せよと言われれば難しいがあくまで絵の印象だ。前時代的な価値観で言えば一億画素=大判プリントとなるがそれだけが一億画素の必要性ではない気がする。魂は細部に宿るは一億画素にも言えるのではないか。

HASSELBLAD X2D 100C / XCD30mmF3.5 / JPG / AWB

HASSELBLAD XCD55mmF2.5V

一月から三月までの目も回るような忙しさが終わり、昨日は久しぶりにご近所の伊佐沼の桜堤をゆるりと散策できた。最近はX1D2もX2Dもホワイトバランスはオート、画質はJPGオンリーで撮っている。仕事では毎回数百数千カットのRAW+JPG撮影でRAW現像後、ガチガチのレタッチでデータ納品という流れになる。

その反動と言えるのかもしれないがプライベートではフィルム時代のお作法に戻ってハッセルが目指すナチュラルカラーのまま出来るだけ少ない補正の絵が良いと思い始めている。フィルム時代のように撮影時にきちんと撮影されたハッセルの絵はハッとするほど美しく心地よく何とも言えない優しさがある。

この55Vは今年の初めに手にした。このレンズも未だに予約なしでは手に入れられず、ハッセルの恒常的な供給不足にも困ったものだ。この最新レンズシリーズの写りの印象は必ずしも良くなかった。今や現代レンズの常識?の光学性能ほどほどレンズなのだがレンズデザイン自体はVシリーズへのオマージュでなかなか良いと思う。

X1D2との組み合わせも良くマッチしていて新しいレンズの恩恵でAFも静かで速くなり、スリムで秀逸なデザインのグリップは相変わらず超絶心地よい。X2Dよりも軽くてコンパクトで標準域コンビとして常用になってしまった。見た目のサイズ感はソニーのミラーレス機並みでとても中判5000万画素機には見えないのも良い。

HASSELBLAD X1D2 50C / XCD55mmF2.5V / JPG / AWB

ジブリパークとゴジラと・・・

昨年暮れからあっという間に日が経ってしまった。1月末から3月までの仕事が全盛期の様な忙しさで自分でも無事に撮影と納品を済ませられるのか?と不安になるほどの仕事量だったが、あと一週間ほどで落ち着きそうだ。一昨年、ジブリパーク一期工事での過酷な撮影の事は書いた。本日、ジブリパーク二期工事、つまり「魔女の谷」が無事にオープンした。これで全エリアが完成した。

今回も二期工事の撮影依頼を頂いて1月末の三日間、愛知のジブリパークへ行ってきた。前回ほどの超過酷な撮影にはならなかったが前回の酷暑に対して1月の撮影ならでは?で初日は雪!に見舞われ、酷寒のスタートとなり今回もどうなるのか!と心配したが二日目・三日目と天候は徐々に回復して最終日の午後には青空の中に劇的な雲が流れる天候になって屋外での撮影になるハウルの城はとてもドラマチックな撮影を終えられた。

完成が待ち遠しかったハウルの城だが実物大の高さ約20mはど迫力!本当に作ってしまった!という感想しか浮かばなかった。城の内装の拘り方も尋常ではなく、ジブリファンにとっては堪らない施設になっている。撮影は目まぐるしく変わる天候のおかげで雪の中のハウルの城や美しいマジックタイムでのハウルの城まで撮ることが出来て両カットとも天候のタイミングや通常の閉園時間を考えると滅多に撮れない貴重なカットとなった。

今回も役得で幸せな時間を持つことが出来た。ハウルの城は一年以上前の計画段階の小さな模型や実物大検証模型などから撮影を担当していたので他の施設よりも思い入れが大きく、魔女の谷には他にもジブリファンにとっては狂喜乱舞する施設やモノが限りなくあるのだがここでは伝えきれないのでぜひジブリパークへ!

3月には東京ミッドタウン日比谷前の初代ゴジラ像の撮影依頼があり、この時も天候とモデル役を務めた若い女性デザイナーのセンスのお陰で関係者の方々にも喜んでもらえる良いカットを撮ることが出来た。この時の撮影はモデルさんが気を利かして自前で用意した昭和テイストのファッションを見てゴジラマイナスワンモノクロバージョンが浮かび、映画のワンシーンをイメージしながらの撮影でそれが功を奏した。

その後、ゴジラマイナスワンは見事アカデミー賞視覚効果賞を受賞して日本中が盛り上がった。お蔭で初代ゴジラ像も大人気だったが残念ながら当初の予定通り受賞翌日に撤去となった。これ以外にもキッザニア甲子園や西武園ゆうえんち、東武動物公園、ツインリンクもてぎなどなどエンターテイメント系のジャンルの撮影が続き、社会的にも話題に上るような仕事に多く関われたことはカメラマン冥利に尽きる。

EOS R3 / RF24-70mmF2.8L IS USM

アップデート

年の瀬に思うこと、自分は世間的にはすでに高齢者と言える年代。同年代はすでに完全リタイヤしている者も少なくない。もちろんバリバリ働いている者も居ていわゆる現役世代を終えた我々の年代は生き方の違いが人それぞれ千差万別だ。そんな中、今年の自分は年齢を気にしつつアップデートという言葉が常に頭の中にあった。

心の片隅にはリタイヤという言葉も無くは無いがオファーを頂ける限り現役を続けたい気持ちの方が強い。だがこの時代、特に自分のジャンルでは現役で居る為にはあらゆる面でアップデートし続けなければならない。シンドイと思うこともあるが今はまだアップデート自体を楽しめている。特に今年はスチールとムービーの同時撮影の依頼が増えて基本ワンオペの自分にとっては体力・知識・技術・経験をフル稼働していく為にはアップデートし続けなければならなかった。

その結果、時代の先端を行く社会的にもよく知られた仕事を通じて大きな経験と刺激を貰えた。やはり自分にとっては先進的で魅力的な現場の環境に居続けてワクワクすることが心底楽しい。まさかこれほど長く現役を続けられるような人生になるなど想像もしなかったが人生とは分からないものだ。今年も多くの方々との出会いに感謝しつつ来年も健康でアップデートを怠らず、自身のパフォーマンスを上げ続けたい。そして大いに仕事を楽しみたい。