念願の上高地

10月初旬、長野での仕事帰りに念願だった上高地を訪れることができた。今年5月に初めて行くチャンスがあり、宿も予約してあった。だが断れない仕事が入って断念した。今回は急遽、長野の仕事が入り、宿も仕事の翌日一日だけ空いていたのでこれは神様が行くチャンスを与えてくださったと考え、行くことにした。

上高地は5月に計画していた時にYouTubeで散々下調べをしていたので地理的なものは何となく頭に入っていた。仕事の帰りだったので車での上高地入りとなり、有名な沢渡駐車場の使い勝手やシャトルバスなどのチケット購入・乗り方など初めての人間には戸惑うことも少なくなかったがそれも良い経験になった。

コースは定番と言われている大正池から田代池、田代橋を渡ってウェストン碑、そこから梓川右岸を河童橋まで歩き、一旦宿に荷物を預けてから梓川右岸を岳沢湿原を抜けて明神池へ。明神橋を渡って梓川左岸を歩いて河童橋まで戻るコース。早朝6時から午後3時まで昼食を挟んで歩き詰めだったので早めにチェックインした。

ホテルでの夕食前に密かに楽しみにしていた日没前後の撮影に出た。日没後の河童橋付近は昼間の喧騒がウソのように人っ子ひとり見当たらない静寂と漆黒の世界。一歩山側に入れば熊の出没の危険性もある。そんな上高地でのたったひとりの夜間撮影はちょっぴり恐怖心も覚える今までにない撮影体験だった。

今回の装備はX2Dと907X50Cの2台のボディとレンズはXCD20-35、XCD55、XCD90の3本。それに夜間撮影の為のジッツオのトラベラー。意外だったのが上高地には90ミリが長すぎたことと55ミリが一番フィットしていたこと。特に907Xとのウェストレベルでの撮影が一番自然に被写体に向かえて非常に心地良かった。

やはりハッセルブラッドナチュラルカラーは上高地の風景に良く似合う。目の前の光景とじっくり向き合う撮影スタイルもこれぞハッセルスタイル!中でも一番惹きつけられたのが明神池。自然が創り出す造形美にしばし釘付けになった。神が宿る地と言われていること、実際に現地に訪れてよく分かった。

今回初めての上高地だったが宿泊して1日半で上高地の全コースを歩いて回れて良かった。おかげで地理的な位置関係や一番惹かれる場所も分かった。帰宅後、改めて上高地の地球規模の地理的な成り立ちを知ってまさに奇跡の土地であることに感動した。次は季節を変えて必ず再訪したいと思うほど上高地は素晴らしかった。

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

NIGHT EXPO

万博は不思議なもの。計画・建設中にはアンチの嵐が吹き荒れ、始まれば訪れた人々は未知の体験に目を輝かせ、彼らが発信したSNSに触発された人々は日ごと増えつつある。新しい技術や体験も良いがそれよりも馴染のない国の文化やその国の人々との直接の触れ合いこそ万博そのもの。

無駄と言われ続けた大屋根リングは実際に目の当たりにすると壮大で見る者すべてを魅了している。よく整備された季節の草花に囲まれた全周2キロ6階分の高さの遊歩道では広大な光景の中のパビリオン群を望みつつ光と風を肌で感じる散策は得難い体験。

日中の喧騒の後、夜の帳が下りたEXPOは別世界に変わる。大屋根リングや各国のアイデンティティを主張したパビリオンのライトアップはとても美しい。NIGHT EXPOの為だけに訪れても十分価値がある。

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

自由学園明日館

先週末、池袋のオフィスビル撮影の待機中に時間があったので約一年ぶりに明日館を訪れた。晩秋の美しい光が館内に射しこみ、とても穏やかな時間が流れていた。落ち着きたい気分の時にはうってつけの空間でいつまでも残っていて欲しい場所だ。

明日館は1921年に羽仁もと子、吉一夫妻により自由学園の校舎として建設された。設計はフランク・ロイド・ライト。当時の生徒さんたちのスケール感?なのかすべてがコンパクトで椅子やテーブルやライト・窓枠など細かい部分にも拘りのデザインが施されていてそれらが綺麗に保たれている。

20年ほど前、ここのホールや食堂などで婦人之友社の記念イベントがあってその記録カメラマンとして初めて訪れてお気に入りの場所になり、機会ある度に訪れている。大正時代の貴重な「遺産」として今も保存・管理され、様々なイベントにも使用されている。

拘りのザインが凝縮されたクラシックな空間にはハッセルブラッドが良く似合う。暗めの空間ではX2Dの手振れ補正は非常に心強く、ディティールにカメラを向けるには907Xのウェストレベルスタイルが目立たない。この空間の時間の流れにはスローなカメラが心地良い。

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 3.2-4.5/20-35E

HASSELBRAD 907X 50C / XCD 2.5/55V

HASSELBLAD XCD 3.5/30

ハッセルブラッドXシリーズのXCD 3.5/30。2017年にリリースされ7年、レンズとしては最新ではないがそれほど古くもない。ライカを長く使ってきたので7年なんてまだまだ生まれたてでライカレンズならば間違いなく最新レンズだ。このレンズ、MTF性能曲線を見ればとんでもなく優秀なレンズにもかかわらず地味な存在なのか所有しているユーザーは少ない。

中判専用なので30mmでも35mm換算だと24mmになる。その為、肉眼で見た広さ、奥行き感など24mmらしくない?自然な描写をする。さらにレンズデザインと重量バランスが素晴らしく、ピントリングのヌメリ感も程よく残っていて真面目に作られた金属製のレンズフードも良い。

この手のフィーリングには個人差があるので人それぞれだがいわゆるプロダクトとしての機材から伝わる「撮影体験」というものは確かに存在し、撮影時のメンタルに影響を与えているのは間違いない。少なくとも自分には影響がある。

しかしこのレンズ、まだたった7年で最新?にもかかわらずXCD 4/21と共に昨年生産完了となった。他にXCD 4/120MACROも生産完了でどのレンズも非常に優れたレンズだけに残念だ。新しいVシリーズやコンパクトな28Pなどラインアップが増えていくことは良い事だが初期の真面目に光学性能を追求していたレンズがラインアップから消えていくのは何とも寂しい限りだ。

余談だがX2Dの一億画素は本当に必要か?と問われることが少なくないが画素数と諧調と色づくりには相関関係があると感じている。数値的に証明せよと言われれば難しいがあくまで絵の印象だ。前時代的な価値観で言えば一億画素=大判プリントとなるがそれだけが一億画素の必要性ではない気がする。魂は細部に宿るは一億画素にも言えるのではないか。

HASSELBLAD X2D 100C / XCD 3.5/30 / JPG / AWB