人は生きていく中で他人の言葉で傷ついたり、悲しんだり、喜んだり、励まされたりすることが多々ある。振り返ると自分の人生の中で忘れがたい影響を残したのは傷ついたシーンだった。しかしそこで浴びせられた言葉のお陰で今日の自分がある。
ひとつは自分が社会人1年生で右も左も分からないデザイナー見習いの頃のこと。あるイベントの仕事でプロダクションのディレクターと仕事をした折、企画書にあったMCという言葉が分からず「この世界に居てこんなことも知らないの?!」と会議中に人前であからさまに馬鹿にされたこと。
MCとはマスターオブセレモニーと言う意味でいわゆるイベントの司会者的な引き回し役のこと。空間系専門のデザインを勉強してきてイベントのことなど学んでこなかった身としては分からずとも悪くはないのだが、これが悔しくて駆け出しの身ながら深く傷ついた。
1年生に向かって人前で放つ言葉かどうかは別にしてその経験によってそれ以後、相手がたとえ1年生でもただ経験がないというだけであからさまに馬鹿にすることのないように肝に銘じた。相手のキャリアの多少や有無だけで態度を変えることのないように常にリスペクトを持って接することを心掛けてきた。
もうひとつはパーソナルコンピュータ黎明期の頃。ウィンドウズOSがまだWindows 3.1で自分もまだまだビギナーで数少ないエキスパートに不明なこと、疑問に思うことをその都度お伺いに行っていた。熱心さゆえ何度も何度も聞きに行ったせいなのかある時「そんなことは猿でも分かる!」と言い放たれた。
この時も何もそこまで言われなくても!?と思ったが、それがきっかけでもう二度と聞きに来るまい!と誓い、その時から全て独学で学ぶことが身に付いたお蔭で今のフリーランスとしての自分がある。マイナスの経験がプラスのバネに変わったということになるがこの類の事は誰にでも一つや二つはあるのではないだろうか?