幸福バロメーター

昨今のSNS上では悲しいことにカメラを語ることを蔑む発言が少なくない。そもそもカメラは写真を撮る道具なのだから写真を語らずカメラだけを語るのはただの機材オタクで本来の目的から逸脱している的な狭い価値観の考え方だ。

特に写真の社会的な関わり・意味合いや作品そのもののクオリティなどに重きを置く人達は機材だけを語ることを忌み嫌う傾向がある。もちろん写真自体を語ることの意味と大切さは重々承知している。だがそこではない、そもそも論点が噛み合っていないのだ。

自分は以前から気に入ったカメラは撮影目的以外に工業製品(プロダクト)としての魅力を感じている。カメラは写真を撮る目的を持った工業製品として世に生まれてきた。工業製品は人の生活に役立ち、寄り添い、直接五感に響く道具として存在する。カメラも同様でプロダクトとしての素晴らしい魅力がカメラには存在する。

ライカやハッセルが永く愛されてきた理由にはプロダクトとしてのデザインの美しさや手にした時の質感からの高揚感など撮影目的以外の魅力を秘めていることは誰もが感じることだ。そしてその美しいカメラと共に過ごす時間が何よりも幸福と感じる人々が存在する。自分もそのうちの一人だ。

人生において一番大切なことは自分自身の「幸福バロメーター」でシアワセと感じる時間をどれだけ多く持てるかだ。ただの道具だの写真を撮ることが本質だの己の価値観だけを主張する輩が何を論じようが関係ない。大切なのは自分自身がシアワセと感じる「幸福バロメーター」だ。

写真を語り、深く探求する人が居る。撮影を楽しみ、技術を追求する人が居る。気に入った機材を愛し、大切にしたいと思う人が居る。お互いが幸福と感じる価値観を尊重し認め合うことが写真文化全体を高め広げることだと感じるのだが違うだろうか?

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/90V

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/90V

907X100Cと撮影体験

フイルム時代のハッセルブラッドの伝統であるウェストレベルの撮影スタイルと静かなレンズシャッターを継承し、中判デジタルカメラとして超絶に美しい画像を生み出してくれる。さらに今までの遺産であるフィルム時代の様々なカメラボディとも共存する。

そんな独創的なカメラがHASSELBLAD 907X100Cだ。リリースされてはや2年半だが前モデルの907X50Cから大きくブラッシュアップされ、特に撮影体験という意味では最新のカメラではなかなか体験できないカメラとして今でも色褪せず、今後も変わらない孤高の存在のカメラだ。

両手でボディとレンズを包み込み、被写体に対して頭を垂れて液晶モニタで構図を確認しながらピントを合わせる。絞りとシャッタースピード、ISO感度を確認し、右手の人差し指の腹で軽く押し込むようにシャッターを押す。静かなシャッター音の後、モニタには美しい画像が現れる。他のカメラにはない唯一無二の撮影スタイルだ。

動画の撮影機能などはなく写真撮影のみ、多機能でもなく速くもない。むしろスロー過ぎて現代のカメラに慣れた人には受け入れられないカメラだと思う。だが何でもかんでも速さや量を求めてきたデジタルカメラとは一線を画し、被写体とのスローで穏やかな時間をもたらしてくれる。

前モデルの907X50Cのユーザーの声を反映して細かいところまで改良され、レスポンスや操作性において痒い所に手が届くカメラになった。手にしてすぐに感じるのが外装の皮革がしっとりして滑りにくい素材に変わったこと。ボディを両手で包みこむスタイルにはありがたい改良点だ。

シャッター廻りのリングも少し高くなり動きが滑らかになって操作しやすくなった。モニタ下のボタン類も変わった。電源ボタンと再生ボタンが併用だったが再生ボタンが新設され電源ボタンが単独になってかつ少し低くなり、間違って電源が入ることが無くなった。ボタンの素材も柔らかなゴム系から硬質のプラ系になって劣化の心配がなくなった。

最大の改良点が薄いボディ907XとデジタルバックCVFの接点の切り離しボタンにロック機能が付いたこと。携行中にこのボタンが不用意に押されてデジタルバックが落下したユーザーが居たらしい。また、外付けビューファインダーの取り付け部分にホットシュー機能が加わりストロボがオン・オフ両方で使用可能になった。ポートレイト撮影や物撮りなどではプロ仕様になったと言える。

907X100Cの外観は907X50Cと全くと言って良いほど変わらないが多くの改良点が施され、カメラとして十分満足できるものになった。誰にでも勧められるカメラではないがこのカメラの撮影体験は昨今の多機能過ぎるデジタルカメラや高機能のスマホ全盛の現代において別次元の体験が出来る貴重なカメラだ。

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/38V

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/90V

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/90V

二度目の上高地

今月初め、ゴールデンウィーク明けの週末に二度目の上高地へ。

前回初めての上高地は長野での仕事帰りに足を延ばした一人旅、今回は相方殿との二人旅、前回宿泊した上高地ホテル白樺荘がとても素晴らしかったのでぜひ相方殿と一緒に宿泊したいと思い、昨年12月の宿泊予約スタート時にすぐに予約を入れた。

部屋は「穂高側テラス付きデラックスツインルーム」白樺荘でも大人気の部屋。季節の良い時期は予約スタートと同時に即埋まってしまうほど。部屋からの望めは噂に違わず本当に素晴らしかった!特にテラスからの光景は左に穂高連峰、正面に明神岳が迫り、最高の天候に恵まれて至福の時間を持つことが出来た。

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 4/28P from terrace’s view

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 4/28P from terrace’s view

今回は先日リリースされたばかりのOSMO POCKET 4と2台のハッセルブラッドそしてコンパクトカメラを持参。OSMO POCKET 4は記録動画用、コンパクトカメラは記録写真用、そして上高地の風景にはハッセルブラッド!レンズは前回の経験から上高地に合った焦点距離と携帯性からX2D/28P、907X/55Vの組み合わせ。

前回訪れた時にも感じたが上高地の風景はどこを撮っても定番中の定番で誰が撮っても美しく撮れる。ただ、この年のこの季節のこの天候のこの時間帯の光景は一期一会。二度と出会えないかもしれない。たとえ定番と言われても残しておきたい。

ハッセルブラッドを通してこの光景と対峙する時、中判ポジフィルムをライトテーブルで見ているような美しい液晶モニタが上高地の見たままの光景を映し出す。それが特別な高揚感を生んで至福の撮影体験となる。これが奇跡の地・上高地をハッセルブラッドで撮る大きな魅力だ。

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/55V

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/55V

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 4/28P

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 2.5/55V

HASSELBRAD X2D 100C / XCD 4/28P

素振り

あるプロカメラマンが日々カメラを持ち歩き、あらゆる被写体に反応して常にシャッターを押していると。それを「素振り」と呼んでいた。野球を経験した人間ならば分かる。言い得て妙だ。

自分も常にシャッターを押すまではいかないがカメラは持ち歩いている。仕事柄、被写体は都市景観や建築などの光と影に目が行ってしまうが本来そこは何でも目に入ったモノを反射的に撮ることが「素振り」なのだろう。

だが、長年染み付いた「カメラアイ」はそうそう変えられない。心と頭に反応した絵を意識しつつ、最適なポジションで素早くシャッターを押す。これでも自分的には「素振り」になっている。肝心なことは幾つになっても日々精進かと。

HASSELBLAD 907X 100C / XCD 4/28P