世の中にはまだまだ知らない事の方が多い。写真人生も半世紀を過ぎ、写真やカメラ、撮影技術についてはそこそこ経験してきて知らないことなどそう多くはない、と思い上がっていたがカメラの進化、とりわけデジタルカメラの進化はカメラを取り巻く道具、いわゆるアクセサリー類の進化をも加速させていた。
今までフィルター類はあまり使ってこなかったこともあってフィルターの進化がここまで進んでいたのか!と驚愕している。たまたまある写真家のYouTubeを拝見していてフィルターワークについて詳しく解説していた。詳細は省くがモニタ画像を確認しながら撮影できるデジタルカメラはフィルター効果を確認しながら撮影できる。この当たり前の事実がフィルターの概念を変えていた。
フィルム時代の経験が良くも悪くも基礎になっている自分。考えてみればフィルム時代は撮ってみなければ分からなかったフィルターの効果をリアルタイムで確認しながら撮影できる。中でもPLフィルターやグラデーションの角型NDフィルターは位置をずらしながら画像のどの位置で適切な効果を得られるかを確認しつつ、試行錯誤しながらほぼ望んだ通りの結果が得られる。
以前、お気に入りの公園「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」の星空的な写真を撮りたいと書いたが、色々な星空写真家やタイムラプス写真家、風景写真家などのYouTubeを徘徊してこのH&Y FILTERに出会った。自分の場合、ライトアップされた公園のシーンと星空の軌跡を同時に撮り、それを写真とタイムラプス動画で残したいと考えていた。
その為のカメラの設定、撮影方法、フィルターの選定と使い方、そして星空についての基礎知識と軌跡の為の専用ソフトと、ここ数日、YouTubeで日夜学んでいた。まあここでもYouTubeなのだが・・・改めて思うがYouTubeは本当に良き先生の宝庫だ。先日自宅ベランダから撮った習作。あくまで練習だがかなり手応えを感じた次第。
雪のトーベ・ヤンソン
トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園。
日本とは思えない幻想的な場所で四季を通じて動画を撮り続けている。
この公園は春夏秋冬で全く異なる姿を見せてくれる稀有な場所。ゆえに何度も通っているが全く飽きることがない。約3年間撮り続けていて雪のシーンは今日が初めて。雪国の人から見れば?だろうが、関東ではなかなか難しいことなのだ。雪の撮影は降る量や時間帯、こちらのタイミングなど様々なことが相まって今までチャンスが無かった。
今日の関東地方は昨夜からの大雪警報の予報通り、朝の9時過ぎから降り出し、雪の状態も時間帯もタイミングも絶好のチャンスで今日しかないと公園に向かった。静かに雪が降るトーベ・ヤンソンは静寂で真っ白な美しい光景が待っていた。寒さも感じず、約3時間、夢中で撮影した。
悔やまれるのはハッセルを持って行かなかったこと。雪が降る中、ボディがR3、R6の2台、レンズは大三元ズーム3本と85mm、それらで交互に動画と写真の撮影。前日のシミュレーションの結果、雪の中では三脚の使用が厳しいことが予想されたので防塵防滴とは無縁なハッセルは見送った。
だが写真はハッセルで記録したいと考えていたので今回のような絶好のタイミングを逃してしまい、無理な事とは分かっていても返す返すも残念。来年も今回のようなグッドタイミングな雪が降る保証はないが改めて再チャレンジとなってしまった。
原点回帰
「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」のことは何度か書いた。この公園が大のお気に入りで2年前から四季折々の美しい姿を動画で残してきた。
ムーミン谷をテーマに自然をそのまま残しつつ、常にきちんと手入れが施され、ムーミン谷のイメージを今日まで残し続けている貴重な公園。何度来ても穏やかな気持ちにさせてくれる。
雪景色以外の動画撮影はほぼ終えて一旦小休止。いずれ四季折々を描いた動画を編集したいと考えている。そして今季から写真の撮影を始めようと思い立った。実は動画を撮影している最中は写真まで残す気は起きなかった。日々、仕事で多くの写真を撮り続け、プライベートとは言え、その延長線上で写真を撮る気になれなかった。
きっかけは今やユーチューバーとして活躍中の写真家の渡部さとる氏の2Bチャンネルでのハッセルブラッドの中判デジタルカメラX1D2と907Xの紹介動画。氏曰く「仕事では使えそうもないが還暦後にじっくり付き合いたいカメラ」としてハッセルブラッドX1D2を選んだ経緯の動画を拝見し、自分のプライベートでのスチルライフにハッセルブラッドが非常に魅力的に見えてきてしまった。
同世代の氏の想いはよく理解できる。自分自身も写真については原点回帰の傾向があって写真を始めたアマチュアの頃の目の前の光景とじっくり対峙する撮影に戻りたい欲求があるようなのだ。ハッセルブラッドでこの公園の四季とゆっくり向き合いながら写真を残したい。そう思うようになった。
仕事以外では全く使わなかった三脚を据え、じっくり時間をかけて構図を決める。絞りを深く絞り込み、スローシャッターで光をたっぷり取り込んで写し撮るワンカットは仕事では味わえない感覚。まさしくこの感覚を求めていた。自分にとって写真はこういう付き合い方だったことを思い出した。
日本のマンハッタン?
仕事やプライベートで首都高のレインボーブリッジを通過する時、いつも見惚れてしまう光景がある。汐留からお台場へ向かう下り線の左側、晴海ふ頭や豊洲方面の高層マンション群、その先に東京スカイツリーが見渡せる。まるでマンハッタン?とは言い過ぎか?空気が透き通った冬の午後や夕暮れ時の美しさなどは運転中でも見とれてしまい、撮りたい!と叫んでしまう。常に車で通る為に一瞬で通り過ぎてしまう光景をいつか撮りたいと思っていた。
その首都高の下の一般道の両脇に遊歩道があることは以前から知っていて一度は訪れて撮影したいと考えていた。だが少々問題があった。まず超望遠レンズ、そして遊歩道の海側、船の航路上に設置された金網フェンスの存在。望遠レンズは200mmまでは所有しているがそれ以上の焦点域は仕事では全く無用の為に縁がなかった。また金網フェンスは開放の明るいレンズでなければ写り込んでしまう。そんなことがあってなんとなく足を運べなかった。
ところがその問題が一度に解決した。先日、若かりし頃のヒコーキカメラマンを再びやってみたいという思いで購入した「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」で羽田空港の旅客機を撮影した折、第二ターミナルのワイヤー状のフェンス越しに500mm開放で撮り、フェンスが全く写っていなかったことに驚いた。仕事では超望遠はほとんど使用してこなかったので恥ずかしながら素人丸出しの感だが遅ればせながら気が付いた。
春が訪れる直前の寒さが残る昨日、空気が濁る前の最後のチャンスと思い、遊歩道へ向かった。今回はR6ではなくR5!4500万画素と300mmから500mmで切り撮る光景は超望遠レンズの圧縮効果と相まって都市景観の人々の営みを凝縮したかのような光景となった。普段、全てを写し込む超広角の非日常感を生業としている身としては真逆の凝縮された非日常感は新鮮だった。