いまだに仕事で苦手意識があるのが空間内の白い壁。元の素材や色味自体は白そのもの(それでも白には数え切れない白が存在するが)なのだがこれがデザイナーが100人居たら100通りの白い壁があると言っても過言でない。計画段階でのマテリアルサンプルはほとんど蛍光灯のある会議室や太陽光が入る打ち合わせ室など一定の環境光で決められることが多い。
しかし、完成するとそこには天井照明や演出照明、床の色、そこにある備品の色、そして太陽光などの外光など様々な光とミックス光、反射光とが入り交ざった世界になる。これが白い壁に影響を与える。人の肉眼というのは大変優秀でそれらの光を認識しつつ、白い壁の白を白と認識しようと補正をかけて見ている。特にデザイナーは自分のイメージの白を白と信じている。
ところがカメラとレンズはバカ正直というか不器用と言うか、白い壁に反射した色を忠実に写しこむ。電球色の照明ならばオレンジ系に染まる。蛍光灯ならば緑系、今流行の白色LEDならば青白く、また、赤い床ならば赤系に、青い床ならば青系に染まる。また、これに輪をかけて影響するのが絞り込んで撮るケースが多い為、スローシャッターになる。その為、さらに激しく色被りする。かなりの数の空間を撮影してきたが今でも白い壁の悩みは尽きることが無い。