昨夜のWBA世界ミドル級タイトルマッチは意外な結果で驚くと共に久しぶりに感動してしまった。昨年、ラスベガスで一方的な判定負けでタイトルを失った村田諒太、その時のボクシングはとてもプロのチャンピオンとは思えないお粗末な内容で彼はもうこのまま引退と思っていた。それが9ヶ月ぶりの再戦で見事なTKO勝ちでタイトルを奪還した。
一般的にはボクサーは持って生まれたスタイルがある。練習で磨きをかける事は出来るがスタイルそのものはなかなか変えられないものだ。例えば井上尚哉などは持って生まれた優れた資質と厳しいトレーニングであのような世界的なレベルのボクサーになった。攻守のスピードとバランス+ハードパンチャースタイルは彼独自のスタイルで他のボクサーには真似できない。これは教えられて身に付くものではない。
村田諒太はロンドンオリンピックのゴールメダリストだがスタイルはアマチュアらしいディフェンスをベースにしたテクニックと右の強打のボクサーだ。プロになってもそのスタイルは大きくは変わらずあまりプロっぽくなく好戦的なボクサーではなかった。性格も真面目で優しい、それが仇になる試合もあった。
ラスベガスではそれが出てしまって相手のロブ・ブラントの異常な手数に押されっぱなしで何も出来ないまま敗れた。それが昨夜はどうだ!1ラウンドから相手のパンチを恐れず強打を繰り出した。2ラウンドも続けてパンチを打ちまくった。技術的な事はさておき、まさしくプロのボクサーはこうでなくてはならない。
村田の必ず勝つという気持ちが全面に出た素晴らしいボクシングだった。彼の気持ちが伝わってきて感動した。世界タイトルマッチという大舞台でここまでスタイルを変えられたボクサーはあまり見た事がない。このスタイルを続けられるのならばチャンピオンとしてまだまだやれると思う。