憧憬

雑誌Penの最新号での操上和美氏の使い込まれたブラックペイントのM4とスーパーアンギュロン!
自分がこのレンズに痺れたのがまさにこのスタイル。「スーパーアンギュロン」ライカフリークにとっては特別な響きだ。

初代スーパーアンギュロン(SA)はf4でシュナイダー社製のLマウントレンズ。当時のライカは21mmという広角レンズを生産する技術を持っていなかった。二代目のSAからF3.4、Mマウントとなり、対称系レンズ構成の独特の写りで多くの写真家が傑作を生み出した。この二代目SAはM型ライカが一番輝いていたM3時代の超広角レンズとして当時としてはプロの写真家の間では特別の存在だった。特にコダクロームとの相性は周辺光量落ちと独特の彩度、墨が混ざったような色合いはこのレンズの特性と相まって独自の世界が表現されていた。

自分の最初のライカはバースデイライカのM3。当時はズミクロン50mmを手にするだけで精一杯。このレンズには手が出なかった。ファーストコンタクトは往年の写真家たちの過去の作品。それらを通してこのレンズの存在を知った。作品とは別にレンズデザインの良さが抜きん出ていた。専用フード12501と専用外付けファインダーSBKOOを装着した姿は理屈抜きに格好良く、とにかく憧れのレンズだった。

その後、M8、M9の時に初めて使用したが後玉の関係で内蔵露出計が使えず、かつ周辺の色被りも酷く、マニュアル露出でモノクロといういかにも玄人的な扱いでしか撮影できなかった。そこがまた良かったのだが使いづらいことは確かだった。その後は手放してしまい、常に気になる存在ではあったが今ではなかなか良い玉に出会えなくなってしまった。そして二代目SA以降その名は復活しなかった。

2011年にリリースされたこのスーパーエルマーが実質の後継レンズとなった。ライカもその謳い文句でこのレンズを紹介している。現代のパースペクティブなシーンではもはや21mmは広角レンズとして物足りない印象も否めないが光のコントラストが強くドラマチックなシーンが多くなる今の時期には「広角の標準レンズ」としてピッタリだ。ライカの21mmは「SAへの憧憬」が常に自分の中に内在するスペシャルな存在だ。

LEICA M10-P / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 ASPH.

LEICA M10-P / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 ASPH.