M8がいまだに一部のファンの間で人気があるようだ。M9-Pが人気なのは理解できるがM8については正直理解に苦しむ。ある高名な写真家の方がM8を高く評価されて愛用されていることが多大に影響していると思われる。モノクロ作品が中心の方なのでM8のモノクロ画質を評価することは理解できるがシャッターフィーリングに至ってはM型デジタルの中でも一番良いと評価されている。個人的嗜好が多分に影響するので何とも言えないがこの点は自分とは意見が分かれる。
レンジファインダーデジタルカメラはEPSON RD-1が先鞭を付けてその後、ライカが満を持してM8を発表した。自分は発売日にブラックとシルバーの2台のM8を手にした。当時はライカを仕事で使用するケースも少なくなかったのでやはり2台所有がマストだった。さて、自分のM8の評価だが結論から言えば言葉は悪いが欠陥カメラだったと言わざるを得ない。
これは有名な話だがM8は赤外線カットフィルタの設計に失敗し、UV/IRフィルタを使用しなければ一部の色が正しく再現されないという致命的な欠陥を持って生まれた。メインスイッチ周りや背面のロータリースイッチなどにも電気的なトラブルが頻繁にあった。自分も実際に何度も経験した。ライカとしては初のレンジファインダーデジタルカメラゆえにまだ設計・生産技術が未熟な印象は否めなかった。
発売当初、この問題に対してライカはUV/IRフィルタをボディ1台につき2枚まで無償で提供されるサービスを行った。これにはにはさすがに呆れたと同時に問題を認めたライカに驚いた。さらにこのフィルタのデリバリに半年以上かかったこともライカらしかった。今となっては懐かしい思い出だがユーザーはみな真面目にUV/IRフィルタを待って新たに設けられた6bitコードに苦慮しながら撮影をしていた。
シャッターフィーリングもお世辞にも良いとは言えなかった。それまでのM型ライカのシャッターフィーリングに慣れていたファンには耐え難い音色でその写真家の方が高く評価することがちょっと理解できない。M9以降のM型デジタルと比べても決して良い音色とは思えないし、個人的にはやはりM10-Pの音色がM型ライカ伝統のシャッター音と感じる。
それでもライカ初のM型デジタルカメラとして熱烈に愛用したことも事実だ。もうかれこれ13年前のことになる。今でもM8の中古が結構な値段で取引されている事実は驚きだが、これはあくまでM9、M、M10と進化・成熟した現在のラインナップの中での評価であり、キワモノ的な評価だ。発売当時に手にし、ある意味高額のお布施?を納めたかつてのM8ユーザーたちは現在の一部のマニアが絶賛する評価を素直に受け入れることはできないだろう。