HASSELBLAD XCD 4/21

お気に入りの公園で土日開催の夜間ライトアップに合わせて星空観察会が行われた。便乗して久しぶりに夜間ライトアップの撮影に公園を訪れた。星空には関心は無かったが観察会を傍で見ていて撮影の合間に参加させてもらった。何基も設置された大型の立派な天体望遠鏡で何十万キロ、何億万キロも先にある月や火星、木星などをじっくり見た。写真にも星景写真というジャンルがあるが観察会がきっかけでちょっと気になりだした。

この日は907xとXCD21mmのみで夜間撮影に臨んでいたが愚かにも?このまま星景も行けるのでは?と。そもそもこのカメラで星景写真など撮っている人など世の中に居るのかな?ハッセルで星景なんて聞いたことが無い。907xで星景撮影の真似事をしてみてこれが意外にも撮影自体は快適なことが分かった。暗い夜間、酷寒の中、手先も凍え、フルサイズミラーレスの小型ボディのモニタやボタン類を操作するのはなかなかの苦行だと想像する。

ところが907xはモード設定用のボタンやダイヤル類は皆無なシンプルボディ。タブレットのように大型のモニタ上で全て済む、しかもこのモニタ、2段階チルト式で非常に見えが良く美しい!それが幸いした。意外だったのは手袋をしていてもタッチセンサーは素手と変わらず操作可能!ハッセルのタッチモニタは凄い!おかげでストレスなく撮影ができた。だがやはりライトアップが明る過ぎて星空の撮影には無理があった。

このレンズ、ピントリングのフィーリングに不満は残るものの描写はただ一点を除いて本当に素晴らしい。残念な点、直線を撮ると歪曲収差が残る。自分の専門分野なのでこの点は厳しい目になる。現像ソフトで補正は出来るが最近は光学性能を追求するよりも後処理のデジタル補正で描写をカバーする傾向にある。最近の各社のミラーレス用レンズはその最たるものだ。

デジタル時代は結果良しならば悪いことではないのだろうがハッセルよお前もか?と残念。星景撮影は開放、高感度、長時間撮影の上、被写体の星は微小とレンズに求める要求度は高い。この21mm、換算17mmと星景には向いてはいるがF4と暗いのが残念。だが僅かに写っていた星を見るとコマ収差等も無く、隅々までキッチリと写っていてとんでもなく優秀なレンズだと再認識した。ハッセル史上最広角レンズは伊達じゃない。

ダイナミックレンジが広い16bit RAWの5000万画素中判センサーの907X。撮影がこれだけ快適ならばレンズ次第では星空写真にチャレンジしてみても面白いな・・・。

HASSELBLAD 907X 50C / XCD 4/21

SWCへのオマージュ

ハッセルブラッドSWC。フィルム時代の超広角専用機、伝説のカールツァイスビオゴン38mmf4.5を搭載、レンズ交換が出来ない潔いコンセプトとスタイル。そして換算約21mmで歪曲収差ゼロの光学性能。広角好きは誰もが憧れる存在で自分もかつて所有し、ピントも露出も何もかもマニュアルのカメラと格闘していた。

ハッセルブラッドXシリーズの超広角レンズXCD21mmF4は言わばSWCビオゴンへのオマージュ。そのレンズのピントリングがどうにもフィーリングが良くないので本日、原宿のハッセルブラッド東京へ持ち込んだ。ショールームとサービスを兼ねたイメージとして近いのがライカ銀座のハッセルブラッド原宿版だ。

ちょっと不満なことは予約なしでは受け付けてくれないこと。しかも営業日は水曜から土曜。日曜から火曜まではお休み。今風と言うかさすがハッセル様。いずれにしても何か疑問があるとここでしか解決できない。触れる製品がどこにでもあるというシロモノではなく、そこが不便と言えば不便だがそれだけユーザーが少ないということか。

レンズの状態だが購入当時からピントリングが軽くスカスカ。前後に若干のガタつきもあり、他のレンズに比べてどう考えても腑に落ちなかった。いくら電子式と言ってもさすがにおかしい。持ち込んだ結果、これは仕様とのこと。あらかじめ2本の21mmを用意してくれていて比べてみたが驚いたことにさほど違いがない。う~ん、何か納得がいかない。

これが通常の仕様ということは製品自体の考え方はどうなっているのだろうか?Xシリーズのレンズは実は日本の日東光学が作っているメイドインジャパン。光学技術ではその世界では有名らしい。だがXシリーズの焦点距離別の各レンズのピントリングやフィーリングにはリリースされた世代ごとに明らかに違いがある。フィーリングに一貫性がないのだ。これはハッセルブラッド東京のスタッフも認めていた。

光学性能は一流でもレンズ躯体の製造ノウハウや技術に関してはどうも経験不足なのではないかと懐疑的になってしまう。構造的にレンズシャッターも影響しているのかもしれないが日本国内でのユーザーが少なく、こういった情報も極端に少ないので残念ながらハッセルブラッド東京のスタッフに何となくかわされてしまった感が拭えない。少なくとも構造的な説明が欲しかった。

このXCD21mmF4。実際の写りは17mmの超広角になるのだがスクエアにクロップすると印象としてはSWCビオゴンで21mmの画角に見えてくるから不思議だ。写りは換算17mmでもレンズの焦点距離は21mmのパースだからあながち間違っていない気がする。SWCも焦点距離38mmが換算21mmの写りになるので厳密に言えば違いはあるのだが結果としてSWCのイメージで撮れればそれで良いのだ。

ハッセルブラッド東京の帰りに数十年ぶりに竹下通り近辺を散策した。あまりの変わりように完全にお上りさん状態。脇道も増えてあっちもこっちも若者ばかり、その若者向けのクレープやファッション関係のショップがどこも溢れ返っている。中国人以外の外国人も多く、ニュースで良く見たコロナ以前に戻りつつあるようだ。

その後は所用で新宿へ。所用自体が空ぶってしまったので時間が空いて都庁の展望室へ。以前から知ってはいたが機会が無く本日初体験。45階からパノラマ的に都内を一望出来て気分爽快。今日は寒くて空気が澄んで青空が眩しかった。快晴の中で久しぶりのスナップもどきも悪くない。少々フィーリングに不満があってもこのレンズは手放せないかな。

SWCへのオマージュと言いつつボディが907xじゃなければ我ながら説得力がないな。

HASSELBLAD X1D2 50C / XCD 4/21

緑寿のカメラ

HASSELBLAD 907X 50C & X1D2 50C

カメラもそこそこ使い込んで酸も甘いも噛み分けられるちょいと変わった人種にしかその魅力が見えてこないかもしれないカメラ。キヤノン、ニコン、ソニー、ライカなど今流行りの最新のミレーレスカメラとは確実に一線を画す希少なカメラだ。

起動はのんびり、AFもお世辞にも速いとは言えない。手ぶれ補正もない。デジタルカメラの電子パートは2世代くらい前と言ってもいい。手持ちではなく、三脚でブレを押さえ、絞り込んできっちりと撮らなければ最高の結果は得られない。

だがそのお作法の後にPCで開いた中判センサーの画像に息を呑むという至福の時が待っている。今まで数多くのデジタルカメラを使ってきたが画質だけで言ったらダントツのトップだ。デジタルカメラにとって一番肝心なものは画質!ということに改めて気づかされる。

ちょっと感動したのは背面モニタの大きさと美しさ。まるで中判のポジフィルムをそのまま見ているよう。メニューもグラフィカルなセンスとお年寄りに優しいインターフェースが素晴らしい。大きめのフォントが使われているがそれが見やすくかつ洗練されている。

今まであまり使ってこなかった背面モニタでのタッチ操作も大きい画面と相まってスマートフォンやタブレットのような滑らかな操作感で国産カメラやライカも含め、これほどシンプルでセンス良くかつ使いやすいメニューは初めてだ。

最新、最速、超高性能なミラーレス機に慣れている人には受け入れ難いスローなカメラだと思うがゆるりと写真と付き合っていきたい「緑寿」の自分にはぴったりのカメラだ。スローなハッセルと自分の年齢でしか撮れない写真があるはずだ。

HASSELBLAD 907X 50C / XCD 3.5-4.5/35-75

儀式

昨年3月ソニーのαからキヤノンのEOS Rにシステムをチェンジ。メイン機をR5、R6に変え、ミラーレスの進化の恩恵を大いに受けている。今回、新たにEOS R3を迎え、さらにアップグレードを目指したが経験したことがないようなカメラの未来予想図的技術が詰まっているR3に感銘を受けている。

新しいカメラを手にすると必ず行う儀式がある。常に手に届く範囲にカメラを置いて時間さえあればカメラに触れ、様々なシーンを想定してシミュレーションをしながらカメラに慣れていく儀式だ。傍から見ればただのカメラオタクに見えてしまうかもしれないがこの儀式は自分にとって非常に大切な儀式だ。

プロの現場では事前に予想できないことが頻繁に起こる。ひとつひとつ細かくは伝えきれないが要約すると様々な条件の中で常にスピードが要求される。それはカメラのパフォーマンスとしてのスピードと自分自身の操作スピードがある。

最近は写真だけでなく動画も要求されることが普通になってきている。そういう意味でカメラ自体のパフォーマンスとスピードは数年前とは比べ様がないほど要求が上がり、同時に自身のスピードも要求される現場が増えた。その為にはカメラ自体の操作は極端に言えば目をつぶっていても操作でき、それに対して頭の方も即応できることが必要になる。

新しいカメラはまずは手に馴染ませ、様々なシーンを想定していくつかの設定をする。さらに条件を変えて実際に操作してみる。手と頭が馴染むまで何度も繰り返す。ゆえに常に傍らに置いて触れ続けている。毎回新しいカメラを迎えると必ず行う儀式だ。

余談だがR3、昨今の半導体不足も影響して予約しても半年近く待たなければならない人気機種だが昔から付き合いのある中野のフジヤカメラに予約して約2ヶ月半で来てしまった。自分のカメラ仲間内では穴場的ショップとして有名だがまさかこんなに早く手に出来るとは思ってもみなかった。

手と頭に馴染んだR5、R6、R3、それぞれ役割が違う三者三様のパフォーマンスがどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

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