映像にあって写真には無い手法に編集がある。カットを繋いでひとつのストーリーを作る。写真にも何らかの流れで撮影者のメッセージを伝えるという意味で組写真があるが映像のストーリー立てとは異なるものだ。さらに映像で決定的に違うのが時間軸をコントロールして全く違う印象を与えられるということだ。
同じ光景を撮ってもその撮り方とその後の編集で百人百様の表現が存在する。伝えるという意味での映像は写真とは全く違ったプロセスで奥が深い。対して写真はたった一枚の作品でも人の心や世界まで変えるほどの影響力を秘めている。それはそれで凄いことだ。
メッセージを伝えるという意味では見る側にとって映像は受動的で写真は能動的だ。映像は視覚と聴覚を通して人の心にストレートに入り、その時間を共有させられる。写真は視覚を通して一旦脳内に入り、自分なりのトランスレートをして心に落ちてくる。メッセージ性において映像は伝える側のウエイトが高いが写真は見る側のウェイトが高い。
デジタル技術の進化でどちらか一方ではなく、両方にチャレンジすることが可能になった今、伝えるメディアとしての写真と映像の違いを改めて感じる。写真は撮った瞬間に依存する為にビギナーズラック的なことも起こりうるが映像は撮った後からのさじ加減次第で如何様にもなって撮影者側の器と技量がストレートに出る。
機材や技術の進化で誰でも映像作品が残せる時代になって逆に撮る側の才能の無さが浮き彫りになる。それでも映像は楽しい。日々落ち込みながらもその刺激が心地よい。