写真集を超えた写真集

金沢の高橋俊充氏の写真集「SNAPS MOROCCO」が送られてきた。クラウドファンディングを利用した試みで高橋氏らしい斬新なプロジェクト「ドキュメンタリー写真家・高橋俊充が捉えたモロッコ。写真集とウォールアートプロジェクト。」で期待感が溢れていた。結論から言うと今回も期待を超える写真集だった。

氏の過去の写真集「Sicilia snaps 2013」「SNAPS ITALIA」で写真のレベルはもちろんそのデザインと印刷レベルに驚愕し、すっかりファンになってしまった。氏の写真集はフォトグラファーとグラフィックデザイナーとしての才能がズルいぐらい高い次元で表現されて非常にクオリティの高い写真集を生み出している。

今回の「SNAPS MOROCCO」だが届いた表紙違い!の2冊の写真集を一見して改めてその考えを新たにした。これは高橋俊充というフォトグラファーの優れた作品を高橋俊充というグラフィックデザイナーが完璧にデザインし、高橋俊充というアートディレクターが斬新なアイデアと細やかなセンスでクオリティ管理をするという並みのフォトグラファーでは太刀打ちできない写真集になっている。

氏独特の色使いやクオリティはもちろん、装丁や各ページを自らの手でデザインし、手に取った人が新たなスタイルを感じられるように考えられた写真集はお目にかかったことがない。単なる写真集を超えた写真集になっている。今回は先行してクラウドファンディングでの出版で他にグッズ等の企画・販売もあってマルチな才能を持った氏ならではのユニークなプロジェクトとなった。

興味のある方はぜひ手に取って氏のマルチな才能ぶりを目にして頂きたい。クラウドファンディングは終了したが2/13から一般発売もされているとのこと。

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写真と文章

写真はやればやるほど奥深く、いくつになっても難しいと感じる。身近の何気ないシーンを美しく見事に写真作品に昇華する人がいるかと思えば誰もが知っている絶景の地を訪れ、眼前の美しい光景を観ても人のこころを打つような作品を残せない人もいる。

文章も写真に似ている。何気ない文体と言葉でその場の空気感をも表現し、その光景が頭に浮かび、こころに染み入る文章を書いたり、何がしかの説明文でも驚くほど分かりやすい文章を書く人もいればいくつになっても小学生の作文レベルの文章しか書けない人がいる。

写真も文章も目の前の事象や自身の体験をどう感じてどう表現できるか、自分というフィルタを通していかに美しく表現できるかだと思う。写真も文章も良いものは美しい。この美しいということは自分自身が常々心掛けていること。

おそらく写真も文章も死ぬまで満点の答えは見つからないのだろう。それはそれで良いと思う。だからこそ続けられる。

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

雲と太陽

最近は四季の移り変わりが以前ほどはっきりと区別がつかない気候になりつつある。だが日々注意深く雲と太陽を観察しているとやはり季節の変わり目は感じ取れる。自宅ベランダは5階で高層階とは言えないが田舎の為、目の前は開けていて田園と川越の街並みが広がり、その先には遠く秩父の山々が連なり、ここから望める空模様は毎日の愉しみのひとつだ。

連日猛暑が続いた8月もそろそろ秋の気配が近づいているようだ。昨日の雲と太陽は珍しくモノトーンな光景で夏から秋へとバトンタッチするかのような気配を感じた。写真をやっている人は雲や太陽の変化に敏感だが一般の人たちは意外と無頓着だ。せっかくの自然が生むアーティスティックな光景を楽しまないのはもったいない。

プライベートではズームは基本使わない。単焦点オンリーだ。ズームでグリグリやって良いアングルを探すというスケベ心はファーストインプレッションを薄めてしまう。ここは50でとかここは28でと決めてその時のピュアな印象を写し撮ることが何より心地よい。

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

幸福であること

この夏は主要カメラメーカーの新製品が多くリリースされ、コロナ禍の中、カメラファンにとっては充実した夏になった。特にキヤノンとソニーはそれぞれファン待望の機種が発売になってSNS上ではお互いのファン同士の対決ムードで熱く盛り上がっている。その対決ムードが良からぬ方向へ進むこともある。

新しいカメラが出る度によくあることなのだが最近は高価なカメラが多いので拍車がかかるケースが多々ある。いわゆる作品至上主義の方々の言い分はカメラはあくまで道具で写真を撮る為のもので撮った作品が大事。腕も伴っていないのに高価なカメラの性能や持つ喜びなどばかりに言及することなど本末転倒!と否定的な意見が必ず出てくる。

カメラ志向に対するアンチの意見だがそもそも論として個人の趣味の嗜好を他人にとやかく言われる筋合いは無いし、カメラが大好きということは素晴らしいことだと思う。それについて先日、人気ユーチューバーの「まきりな」さんが語ったことが当然のことだが久々にすっきりして我が意を得た。

氏曰く、趣味の世界で何が一番大切かと言うと「自分が幸せになれること」と。カメラが好きでカメラを愛でることで自分が幸せに感じるならそれが一番、撮影することで幸せに感じるならそれが一番、作品を他人様に見てもらうことに幸せを感じるならそれが一番。人それぞれ顔が違うように幸福感はそれぞれ違って良いのだ。

カメラを愛でることを恥じることなど一切ない。一番大切なことはそのことによって自分が幸福かどうかだ。ちなみに自分のカメラと写真の幸福感の比率だが仕事ではカメラ 1:写真 9、プライベート(=ライカ)ではカメラ 9:写真 1だ。どちらも幸福感は半端ない。文句あります?笑

LEICA M10-P / Thambar 90mm f2.2

LEICA M10-P / Thambar 90mm f2.2