namie amuro Final Space

安室奈美恵さんが引退した。25年に渡って老若男女、各世代、これほど多くの人々に愛され、社会的にも影響力のあった女性アーティストは記憶に無い。まさに平成の歌姫。昨年突如引退を表明してこれもトップニュースになった。1年前に発表という異例のスタイル。スタッフや関係者たちには誠実な姿勢で幕引きをしてファンとはお別れの準備を完璧に用意した。そして愛され続けて身を引く。なんと見事な引き際だろう。

振り返ると今更ながら彼女の豊かな才能と資質、それを開花させた努力と精進。尊敬に値する。こんな自分でも彼女の曲はよく知っているし、よく聴いていた。また、たった一度きりだったが東京ドームのコンサートを観ることができたことは今では貴重な財産だ。MCは一切無しで約3時間を歌い、踊り、ステージを駆け巡る彼女のステージは圧巻だった。

先週はその安室奈美恵さんの最後のイベント「namie amuro Final Space」の会場記録写真撮影の為、沖縄~東京~大阪~福岡とタイトなスケジュールで4会場を飛び回ってきた。社会的な現象にもなっている引退とファンが何度も訪れている最後のイベントの仕事は大変光栄なこと。実際に撮影に行った各会場での圧倒される展示内容と訪れるファンの熱意と涙を目の当たりにして改めて偉大なアーティストだったと感じた。

今回のイベントはよく知られた多くの曲はもちろんファッションリーダーたるセンス抜群の膨大な衣装の数々や多くの映像、ビジュアルイメージなどひとつの時代を創ってきたクエリエイターとして引退に相応しい集大成のイベントだった。そんな彼女の引退という大きな節目にほんの少しだが関われたことは自分の人生の中でも忘れられない仕事となった。安室奈美恵さんお疲れ様でした。そして新たな人生に幸あれ。

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

嬉しい知らせ

昨年も書いた記憶があるがこの時期の嬉しい知らせがまた舞い込んだ。先日、名古屋出張に向かうのぞみの車内でメールチェックをすると某大手ディスプレイ会社のデザイナーから喜びと感謝の内容のメールが入っていた。毎年、この時期は我々の業界ではその年の空間デザインの中で特に優れた空間作品に贈られるデザイン賞の発表の時期になる。

昨年10月に撮ったある仕事がDSA日本空間デザイン賞2018の金賞を受賞したとのこと。このデザイン賞はその年の1年間で作られた優れた作品の中から大賞1作品、金賞10作品、銀賞15作品、BEST50賞24作品、その他7作品が選ばれる。今年の応募総数は771作品だったそうで受賞すること自体、なかなかハードルが高いと言える。今回金賞10作品の中に入ったことは撮影を担当した者としては素直に嬉しい。何よりデザイナーや関わったスタッフの方々の苦労がこういう形で報われ、微力ながらその一助になったことが一番嬉しい。

実は撮影したこの時期、施設に居た母親の死期が近づいていていつお迎えが来てもいい状態でロケハンも含めて何度か京都に行く中、メンタルな面でも複雑な想いが重なる時期だった。ただ、企画もデザインも素晴らしい内容で撮影中も我を忘れるほどの空間だった。さらに母親の事もあったせいか普段よりも感覚が研ぎ澄まされて撮影に集中出来た。そんなこともあって今振り返ると感慨深いものがある。一生忘れられない仕事となった。

LEICA Q

LEICA Q

仕事のハナシ「雲台」

空間系カメラマンは狭い世界だ。その為、専門にしているカメラマンには顔見知りが多い。だが、最近はご同業のカメラマンに混ざって若い新しいカメラマンの姿も見かけるようになった。その撮影スタイルを見る度に感じること???。カメラやレンズのセレクト、三脚しかり雲台しかり、その撮影スタイルしかり。専門としてまだ駆け出しなのか専門外のカメラマンなのか?いずれにしても看過できない感情が湧いてくる。

空間系撮影、すなわち「建築」や「室内」などの撮影は水平線と垂直線とその画面内でのバランス・配置を常に意識しつつ、デザインコンセプトに合った最適な構図が重要で原則はノートリミング撮影だ。広めに撮って撮影後にトリミングというカメラマンも散見するが、ブツ撮りなら理解も出来るが空間の場合、パース自体が変化してしまい、撮影時の構図の意図が変わってしまう。

また、特徴として使用レンズがほとんど広角系レンズになる。通常12mm~28mm前後の広角レンズがメインになるが、この場合、高さや位置が微妙に変わっただけで全く意図が違った構図になる。特に超広角レンズは左右に数センチ、上下に数センチ動いただけで全く違った構図になる。その為に現場レベルで正確な構図の決定が必要になる。

そこでミリ単位で微動可能な雲台が必要になるが、この要求に応えられる雲台はかなり限られてくる。ジャンルとしてはギア雲台と呼ばれる雲台だ。その中でもこれしかない!と、出会ってから惚れ込んでいる雲台が「ARCA SWISS」の「 C1 CUBE」と「D4 GEAR」だ。この2機種はノブによってミリ単位の構図変化が可能で動きも大変滑らか、その精度も桁違いだ。ギア雲台ではマンフロットの410や405が有名で私も長年愛用してきた。空間系専門のカメラマンには今でも御用達雲台だ。ただ残念ながらこの2機種に比べると滑らかさや精度、フィーリングなどは次元が違う。

三脚や雲台はカメラやレンズに比べ、後回しにされがちだがこと空間撮影のジャンルでは精度や正確さ、使い勝手などカメラやレンズと同等、いやそれ以上に大切なアイテムだ。だがベテランで著名な空間系カメラマンの中でもカメラは新しいものを使っていても雲台や三脚は長年愛用してきたものを使い続けている方が多い。ハスキーやジッツオの雲台を慣れ親しんでいるからと使い続けるのも考え物だ。カメラも進化しているが雲台も進化している。プロたるもの絶えず向上心と研究心を持ち続けなければならないと思う。

LEICA Q

LEICA Q

ライカでは撮らない世界

先日の相方殿の太鼓撮影でXA20が故障して思うように撮れなかったことは書いた。相方殿には悪いがもし仕事だったら取り返しがつかないところだった。修理も考えたがすでに5年前のビデオカメラで液晶モニタは屋外ではほとんど見えず、今時4Kも無く、今後のことを考えたらもう潮時かと。仕事でも長回しはほとんど無くなった状況で果たして専用ビデオは必要なのか?動画についてはiPhoneでも仕事が出来てしまう昨今、今の自分にはもう専用ビデオは要らないなあ。の結論。

以前、SONYのRX10M3というコンパクトデジカメを使っていたことがあった。大きさはコンパクトではないがいわゆるレンズ一体型のネオ一眼と呼ばれる不人気なカメラだ。ただ、突き抜けた特徴のカメラでレンズはツァイスのVario-Sonnar 24-600mm f2.4-4.0という明るい超高倍率ズームと4Kやハイフレームレートのスーパースロー動画が手軽に撮れたり、それが必要な人には唯一無二のカメラだった。1インチというセンサーはスチールはともかく動画は仕事でも十分使えるレベルなことは分かっていた。やはりこれかな?と。

このシリーズ、すでにRX10M3の後継機としてM4が出ていた。しかもAFが今仕事で使っているα7RM3と同等レベルの性能に進化していてショップで体験してその凄さに驚いた。α7RM3はスチールはもちろん動画用のメイン機でもある。そのサブとしても十分だ。仕事でのXA20の後継として、プライベートではRX10M3で体験した600mm f4.0というライカでは撮らない肉眼を超えた世界を再び残してみたい為。という大義名分?もある。(笑)

今日の写真は以前RX10M3で撮ったライカでは撮らない世界・・・川越近辺は鉄塔の街でもある。

RX10M3

RX10M3