赤ズマロン。なんとロマンチックな呼び名。その昔Ⅲcとヘクトール28mmを所有していた頃、Lマウントの赤ズマロンは憧れだった。デジタルのM型になって何度か手にしたいと思ったが良い玉になかなか出会えず、それ以来、心のどこかにひっかかっていた。2016年に赤ズマロンがMマウントで復刻!という朗報?にこんなことはやはりライカにしか出来ないことだと驚いた。
赤ズマロンMはオリジナルズマロンの基本設計は変えずに新たなコーティングや細部のレンズデザインをリファインし、現代の赤ズマロンとして生まれ変わった。f5.6というスペック、対称系レンズのメリットと引き換えに周辺落ちというデメリットなど合理的な国内メーカーでは企画すらできないだろう。それをクセのある当時の描写のままに復刻するのはさすがにライカだ。
Q-Pの28mmと赤ズマロンMの28mm。これほど写りに差があるともはや同じ28mmを所有しているイメージは無い。Q-Pは例えればアルプスの天然水、常に清清しい絵が得られ、開放のボケの美しさは素晴らしい。対して赤ズマロンMは芳醇なワインのようで絵に艶と色気があり、周辺落ちとまろやかな解像感が何とも言えない立体感を生み出している。
SUMMILUXとSUMMARON。この異なる28mmを通して改めてライカレンズの妙とはそれぞれのレンズとの対話が存在することだと感じる。現代のミラーレスレンズでは体験できない強烈な個性との対話。それらを通して被写体に対峙するというライカならではの体験は一度経験すると優秀だが無個性な現代のレンズでは物足りなくなる。