ズマロンの粋 つづき

一昨日、ズマロンの粋などと書いてほとんどズマロンとは違う内容になっていた。書くことは嫌いではないので手が進むうちにどんどん本題から逸れてしまうことが多々ある。しかも長くなる。悪い癖だが治りそうもないので諦めている。以前も書いたが誰かの為ではなく自分自身の備忘録・日々の記録的な面もあるのであっちこっち飛んでも良しとしている。

なので改めてズマロンについて。

自分のファーストズマロンは初めてのM型ライカのM3を手にした時、初の35mmで眼鏡付きのズマロンだった。とりあえず買える範囲のレンズが眼鏡付きのズマロン35mmf3.5だったのだが、初めてのライカレンズで35mmの味など分かるはずもなく、描写の記憶はほとんどない。ただ、諧調の豊かさが売りのレンズの片鱗はあったように記憶している。

二本目のズマロンはR-D1の頃、同じく35mmのズマロンだがLマウントのズマロン。軽量・コンパクトで財布にやさしいレンズだった。R-D1では焦点距離が約1.5倍になるのでほぼ50mmの標準レンズになってしまい、なかなかに悩ましかったがR-D1の描写と相まって諧調豊かで柔らかく、線が繊細で色乗りも好ましかった。

三本目のズマロンはMマウントの35mmのズマロン。こちらはf2.8でf3.5の眼鏡付きとは違うデザインで人気の8枚玉に似ていてむしろそちらの理由で購入したといった方が正しい。不純な理由だったがM8との相性は良かった。CCDのフィルタに欠陥を持つ?M8独特のモノクロはズマロンの特性と相まってさらに諧調が豊かで悪く言えば眠くてとぼけた写りだった。こちらも焦点距離が約1.3倍で素の描写とは違っていたかもしれない。

M9になってようやくフルサイズでのレンズ描写になったとたん、暗めのズマロンには目が行かなくなり、専ら明るいズミクロンやズミルックス、ノクチルックス、ヘクトール、タンバールと沼の底を彷徨うことに。ただズマロンでの心残りはLマウントの28mmf5.6だった。人気があって希少で高価な上、良い玉に巡り合える確率が低かった為になかなか手に出来なかった。

そんなことで復刻版のMマウントのズマロン28mmf5.6が出たときは心が躍った。発売直後はいつものライカで買いにくい状況が続いたが、昨年限定版のマットブラック・レッドスケールのズマロン28mmが発売されたときは迷うことなく飛びついた。その後は大のお気に入りになり、M10-Pの装着率ナンバーワンとなっている。

ズマロン遍歴を披歴するつもりはなかったがこうして振り返ってみるとフィルム時代のM3、デジタルのR-D1、M8、M9、M10-Pとその都度ズマロンを使用してきた理由は共通している。コンパクトで軽量、開放絞り値に縛られず、ただただ、構図と光のタイミングの出会いを求め、柔らかく、優しい、繊細な線が紡ぐ写りに魅せられていたからだ。

ライカレンズには哲学が潜んでいる。人それぞれの哲学にフィットしたレンズに出会えればこれ以上ない至福の時間が待っている。ズマロンは自分にとっては至福の時間を与えてくれるかけがえのない存在だ。ズマロンという呼び名とその響きも素敵だ。高性能でドヤ顔揃いのライカレンズ群の中で小さく脇役的なズマロンこそ粋な存在に感じる。

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6