開放で捉えたイタリア

昨夜、高橋俊充氏の写真展に伺った。イタリアのスナップとクリエイターたちのポートレイト、そしてゼラチンシルバープリントによるモノクロ銀塩プリントと盛り沢山。さらに超絶クオリティの写真集「ITALIA SNAPS 2010-2017」。写真集はやはり予想以上の出来栄えで、装丁の考え方、細やかなデザイン、写真のクオリティ、これほどの写真集にはなかなかお目にかかれない。

高橋氏の撮るイタリアのスナップ。個人的に特に好きな作品は35mmや50mmレンズで被写体を中間距離で捉えた開放描写での作品群。近づき過ぎずに適度な距離感で捉えた被写体の周囲を包む前後のボケが生み出す空気感。ピントの合った被写体以外の描写の曖昧さが見る人にイタリアの空気を感じさせる。さらに北陸育ちの色彩感覚とも言える抑えた彩度と強めのコントラストが氏の独自の世界観を創り出している。

その世界観が見事に表現されているのが今回の写真集。期待以上の出来栄えで手に取る度に唸ってしまう。表紙と裏表紙にもその開放描写での作品が使われている。例えれば高名な美術館での貴重な作品カタログ並みの出来。一般の出版社が作る並みの写真集ではこれほどのクオリティは体験できない。それにも増してこの写真展と写真集に関わるほぼ全ての費用が自前ということ。

真のクリエイターは本来自分の目指すべき世界を実現する為にはスポンサーやパトロンなどに気を遣わず、思い通りに創ることが理想であり、それが結果的には良いモノを生み出すことに繋がると思う。サポートされることが当然と考える昨今の一部のプロたちにも少しは見習って欲しいものだ。ちなみにこの写真集、二冊購入して一冊は写真集として、一冊は一枚一枚を額に飾る写真としても成り立つほど印刷クオリティが高い。おそらく氏はそんな使われ方には同意されないと思うが・・・

LEICA Q

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