タンバールと出会ってもう10年ほどになる。
ライカレンズの中では唯一のソフトフォーカスレンズで独自の世界観を持ち、ライカに精通してくると気になる玉として有名だ。今でも玉自体は見かけるがヘクトール73と同じで程度の良い綺麗な玉はもう無くなりつつある。このレンズはソフトフォーカスとして有名だが同時に驚くほどシャープで繊細な解像力を秘めていることはあまり知られていない。
お得意の光を滲ませたヴェールに包まれるような絵も良いが、彩の部分に薄いヴェールがかかり、美しいトーンを神秘的にかつ繊細に表現するシーンは得も言われない美しさがある。このレンズが生み出す世界は本当にファンタスティックで美しい。
ライカオールドレンズは人類の財産だ。今はほんのひととき私が預かっているだけ。おそらく私の死後もタンバールは生き残り、誰かの手に渡り、またその人から別の人へと渡って、何十年と生き続けていくと思う。ライカレンズとはそういうものだ。ゆえに誰もが惑わされてしまうほどのロマンを持っている。