LEICA Q3の評価

LEICA Q3がリリースされて早いものでちょうど5ヶ月。その間、写真と動画のまさしく二刀流で期待通りの活躍をしてくれている。LEICA Q3はM型ライカの血を受け継ぎ、高品位なボディに銘玉ズミルックス28mmを備えたレンズ一体型コンパクトデジタルカメラだ。

Q、Q2から進化してQ3はプロダクトとしてのクオリティ、画質、インターフェイスなどカメラとしてこれ以上何が必要なのか?と言えるほど現時点で文句の付けようがないカメラとなった。だが必ずしも正しい評価がされているとは言えない。

現在、Q3で写真と動画を積極的に使いこなしているユーザーは少ない。ライカと言えばM型ライカと同義語でQ3はM型ライカのエントリーカメラという位置づけが多くのライカユーザーの認識だ。その為、このカメラを語る場合、写真のみの評価が独り歩きしている。だがQ3の評価はライカ好きのコアなファンだけの評価に終わるカメラではない。

LEICA Q3 / 28mm / from home balcony

動画に関して動画だけ使いたいユーザーがこのカメラをわざわざ選ぶとも思えない。その為、最新のデジタルカメラとして正しい評価がされていない。写真も動画も二刀流で使えてこそ現代のフォトグラファーで少なくとも両方使用しての評価がなされるべきだと思う。写真に関してはすでに多くのSNS、ウェブサイト等で高い評価がされているが動画についてのレビューは限られた数しかない。

当初は仕事での動画のお作法でフルマニュアルの撮影を試みていた。特にf1.7という開放描写の誘惑に惑わされていた。ところがフルオートでも「絞り・シャッタースピード・ISO感度」が思いのほか賢い選択をしており、画質も通常使用においては全く問題が無い。マニュアルで表現したい場合を除いてフルオートでも十分表現出来ることが分かった。

LEICA Q3 / 35mmCROP / MACRO-MODE

Q3の動画性能は今の自分にとっては必要にして十分な性能だがウィークポイントもある。手振れ補正の効きが甘く、特にローリングに弱い。AFはもう少し速くなって欲しいし、シーンによっては神経質で気難しい動きをする。また、ライカの構造上、中間シャッターが選べないのでフリッカー現象が起こることもある。中間シャッターはともかく、他の2点はファームアップで何とかなりそうなので期待したい。

ただ、どんなカメラにもウィークポイントはあるもの。それを上手く使いこなすのもユーザーサイドの腕の問題だ。眺めて触って使って心地よく、常に持ち出しても苦にならない。どんなシーンでもその場の空気を壊さず、写真でも動画でもハイクオリティなイメージを生み出せる。Qシリーズ三世代目でほぼ完成の域に達した。LEICA Q3はライカ社が現代のイメージシーンに応えた唯一無二のデジタルカメラだ。
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LEICA Q3 / Full-Auto / DJI RS3 mini / iPad pro + Leica FOTOS + VN

Q3の遠近補正

M10-Pを所有していた頃、ファームアップでライカ・パースペクティブ・コントロールという機能が追加された。これは所謂シフトレンズと同様の描写をカメラ内で行う遠近補正機能。そのことは承知していたが最初から全く使う気が無かった。そのままM10-Pとはお別れした。

仕事柄、常時シフトレンズを使用している身としてカメラ内でのパース補正などもってのほか、話にならん。と、年寄り特有の思い込みで全く眼中になかった。Q3にも同様の機能があり、物は試しと先日、使用してみた。

大変恐れ入りました。補正の結果はなかなかの優秀さで画質の劣化等も見られず、かなり使える機能であることが分かった。よくもまあこれほど簡単に正確に補正ができるものだ。自然で無理のない絵にするには少々コツは要るがシーンによっては仕事でも十分に使える。

ライカがわざわざ追加してまでこの機能を入れてきたことが今更ながら分かった。ただし、EVF/背面液晶の使用が前提なのでM型ライカでの使用は未だに疑問に思うがこの機能と相性抜群のチルト液晶が加わったQ3ならば強力な武器になる。

LEICA Q3 / Monochrome HC / Perspective control

一億画素のロマン

デジタルカメラ黎明期、自身初のデジタルカメラはNikonのCOOLPIX 950だった。センサーは1/2型CCDの約200万画素で本体がスイバル式のユニークなそれでいてニコンらしいクオリティのデジタルカメラだった。それから20数年、X2D 100Cは中判センサーで一億画素!20数年で約50倍の画素数になった。

画素数を増やすことと高画質は必ずしもイコールにはならない場合が多々あるが節目節目でブレークスルーのデジタルカメラが誕生してきた。個人的には1000万画素、2000万画素、5000万画素がひとつの節目になってきたと思う。そしてとうとう一億画素。ひと昔前まではセンサーが一億画素に届くとは想像すらしなかった。

仕事では5000万画素を常用していたので一億画素と言ってもそこまでの差はないだろうとタカを括っていた。だがしかし、普通に手持ち撮影をしてモニタで拡大したところ、驚いた。デジタルカメラの画像でここまで驚いたことはあまり記憶にない。

21mmF4開放で撮影した葉の部分を拡大したところ葉脈やその周辺までハッキリと確認できた。何気なく普通に撮影しただけだ。それまで一億画素とは高周波の風景を画面の隅々までハッキリと写し込むことがメリットと考えていたが、日常の何気ない風景の中で肉眼では確認できないモノまで写し込むことができる。

センサーが中判サイズということ、レンズが優秀ということもあるだろうがとにもかくにも一億画素の世界とはいわゆる質感描写を超えて被写体の素材そのものをキャプチャーするかのように人の目には見えてこないモノの本質までをも写し込む力がある気がする。長年、写真をやってきて初めてロマンを感じた。

HASSELBLAD X2D 100C / XCD 4/21 / w11656pixel (Original)

赤枠部分 / w2100pixel (Clipping)

HASSELBLAD X2D 100C

普段撮り慣れている場所でも精緻さ・精細さが違うと見えてくる印象も違う。競うだけの高画素化には諸手を挙げて賛成ではなかったが一億画素という異次元の世界を見せられると考えも変わる。リサイズしてネットに上げる意味があるのか?と自問しつつ、デジタルカメラの進化は次から次へと想像を超えてくるから面白い。

今どきの動画機能は無く、カラー設定はハッセルカラーのみ。お好みに仕上げたければRAWデータ一択。メニューはお節介なモノは一切ないシンプルインターフェイス。大型モニターは中判ポジフィルムを見るかの様。ボディはアルミ削り出し&スウェーデンデザイン。X2D 100Cは超高画質の写真を撮る目的のみの潔いカメラだ。

HASSELBLAD X2D 100C / XCD 4/21