HCR2019

水曜日から昨日まで3日間、ビッグサイトのHCR2019に通い詰めだった。HCR2019とは正式名を「国際福祉機器展2019」と言って福祉に関するハードウェアやソフトウェア、サービス、関係企業、関係団体などが一堂に会する展示会でこの展示会の仕事に携わってかれこれ14年になる。

初めて携わった2006年は自分自身がまだ母親の介護を続けながらの撮影仕事だったので目にする事すべてが勉強だった。介護業界もまだ黎明期で今ほど参加企業も多くなく、生まれたばかりの介護制度の為の行政、各種関連団体主体の啓蒙・ピーアール的な内容だった。それが今では多くの企業と団体が参加し、福祉車両などは国内主要メーカーはもちろん数年前からはあのメルセデスベンツやアルファロメオなどの福祉車両が出展されるようになった。

今回、改めて感心したのは寝たきりで口と目しか動かせない障害者がニュースや天気予報、照明のオンオフ、その他生活全般でアレクサを便利に使っている映像。CMでカレーがどうとか彼女がどうとかそれもアリだがこれこそがアレクサの有効利用なのではないかと強く感じた。スマホやタブレットなどは介護業界では以前からその有用性は語られてきたが今後5Gの時代になれば障害者にとっては画期的な世界が広がるように感じる。

また、この展示会の特筆すべき光景は来場者も出展者も真剣だということ。知りたい事や調べたい事、新しい技術や知識など日々、福祉・介護の現場で悩んでいることをダイレクトに見聞きし、それに応える出展者の真剣な姿は毎年あちこちで見られる。そんな展示会はなかなか無い。モーターショーなどの単なるPRの場としての展示会が沈没しつつある昨今、ダイレクトな情報交換の場はそれを本当に必要としている人にとっては無くてはならないことを実感した。

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

久しぶりの北の地

今週前半は久しぶりに札幌でのお仕事だった。白い恋人というお菓子はよく知られているが今や日本国内はもちろんアジアでも有名なお菓子で新千歳空港でもあちこちの売店でかなりの数が売られている。まさに北海道をそして日本を代表する銘菓。

その白い恋人を生んだ石屋製菓の札幌工場は白い恋人パークと呼ばれ、中世の雰囲気を持った館やガーデニングの世界が広がるさながらテーマパークの世界。パートナーとしてスポンサードしているコンサドーレ札幌の練習場も隣接して地元では有名なスポット。

その白い恋人パークがリニューアルされて本日7月12日にオープンした。ストーリー仕立ての新たな見学コースが充実し、その他の付随施設も一新した。今回の札幌でのお仕事はそのリニューアルした白い恋人パークの撮影。

施設は内容も濃くボリュームがあって撮影量も多く、久しぶりに長時間の撮影となったが、もともとテーマパークが好きで日本で一番数多くテーマパークを撮影してきたカメラマンと自負?している自分にとっては仕事ということを忘れて実に楽しい時間になった。

北海道の仕事ではもうひとつ小さな楽しみがある。往復の飛行機旅だ。羽田を飛び立って北へ向かう途中、雲海を超えるとそこはかつてパイロットを目指した自分にとっては憧れの世界。なぜか北行きが好きで窓の外に広がる刻々と変化する光景を夢中で望め続けている。そういうひと時が毎回楽しみ。

今回、仕事用機材が大量にあった為にサブのカメラはRX100M6のみ。相変わらずのスーパーサブっぷりには感心させられた。機内からの光景や現場での咄嗟のカットなどサラッと撮れてしまうがクオリティはプロの機材並み、最高最強のコンパクトカメラだ。

RX100M6

RX100M6

プロのカメラマンとは?

今やデジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能が進化して誰でもがカメラマンになれる時代。SNSやブログを通じてプロになってしまう人やインスタから世界へ飛び出る人などアマチュアプロ?として様々なスタイルが生まれている。しかし、本来のプロとは?と本質的な部分で疑問を感じることが多々ある。

プロカメラマンとは端的に言えば依頼主=クライアントの要求に応え、限られた予算、定められたスケジュール、多種多様な現場の条件、その中でクライアントが望むイメージを提供できること。その事に尽きる。そのためには当然ながら撮影技術はもちろん、ある一定以上のクオリティも必要だ。

だが、今は世間一般的に言えば目に見える部分だけの写真が上手いか下手かだけで判断されがちだ。だがそれは氷山の一角なのだが腕に覚えのあるアマチュアほど隠れた部分が見えていない。好きなときに好きなカメラで好きなように写真を撮る事などプロの現場ではまず無い。

撮るべき被写体の世界に精通し、クライアントや多くのスタッフと良好なコミュニケーションを持ち、きちんと予算とスケジュールを守り、クライアントの要求を上回るクオリティのイメージを提供できるかどうか、つまり撮影技術や写真を仕上げるセンス以外の要素も重要になってくる。この点がプロとアマとの決定的な違いだ。

付け加えればプロの世界は結果が出なければ次の仕事はない。アマチュアは結果が出ても出なくて自分自身の中だけで完結できる。ある意味お気楽な世界だ。本当に実力があるプロの見分け方。それは仕事が継続しているかどうかだ。実力が認められていなければ仕事の依頼が続く事は無い世界だからだ。

さらにプロとして様々な条件をクリアしても実は最も大切なものがある。それは人としての誠実さ謙虚さだ。これはなかなか目には見えないものだが成功しているプロは必ず備わっているものだ。

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

ICHIRO

昨夜、イチローが現役引退を表明した。来るべき日が来てしまった。今年のキャンプからオープン戦、開幕戦とあのイチローが全く打てない様子を見ながら何となく感じていたことが現実となった。ただ、彼なら50歳まで本当に現役を続けるのではないかと思い込んでいた。

仕事柄、役得と感じる仕事が稀にある。今から7年前の2012年、今年と同じアスレティックスvsマリナーズのMLB開幕戦が東京ドームで行われた。こういう変則的なMLBの開幕は初めてのことだったので特別なイベントが催されることになった。当時はライブステージやライブイベントも多く撮っていたので自分にお声がかかり、ワクワクして東京ドームへ向かった。

東京ドームのグランドレベル、メジャーの選手たちと目と鼻の先での撮影はエキサイティングな体験だった。スポーツカメラマンならば当たり前の事だと思うが畑違いの自分が彼らと同じグラウンドに立っていること自体が夢のようだった。その時はカメラマンというよりも野球少年の頃の自分に戻っていた。

もちろんイチローもマリナーズの一員として来日し、数メートル先のイチローの息遣いを感じながら彼をカメラに納めた。イチローはテレビなどを通じて見るよりも意外と身長が高い。近くで見るとそれを改めて感じたことを今でも記憶している。彼の記録に関してはもう言葉では言い尽くせないほどの偉大なプレイヤー。普段から節制を心がけ、常に美しく強くしなやかで独自の美学を持った稀有のアスリートだった。

平成が生んだ偉大なスターがまたひとり現役を終えた。長い間、夢をありがとう!そしてお疲れ様でした。次のステージでの彼の活躍を期待したい。

LEICA Q-P

LEICA Q-P