感性のプロセス

自分が関わっている空間撮影はその空間をデザインしたデザイナーが持つ雰囲気やデザインコンセプト、関わったスタッフの熱量、空間が持つ空気感、パワーなどスタッフや現場で直接感じるフィーリングが最後の仕上げに大きく影響する。それは目には見えないが言わば「感性」のプロセスだ。

フリーランスにとってオファーを頂かなければ何も始まらないが、依頼者側の依頼の仕方でこちらのマインド=感性が変わってくる。自分を正しく評価して頂き、信頼した上でのオファーは本当にありがたい。だが他のカメラマンの手配が出来なかったことが感じ取れたり、いの一番に費用を尋ねてくるケースなどはその後の仕事に繋がることは少ない。

お互いのリスペクトと信頼、これがすべてのベースになる。費用は大切だが最も重要なことはそこではない。こちらを評価した上でこちらのやり方を尊重してオファーを出してくれる時、そもそもオファーとはそういうものだと思うが・・フォトグラファーとクライアントとの関係はたとえそれが初めての依頼でもその関係性さえベースにあれば良い結果に繋がる。

良い仕事にはお互いの良きコンタクトから生まれる「感性のプロセス」が無くてはならない。それを感じとれる人との仕事は貴重だ。その場合は金額は二の次なる。コロナ禍の中、オファーは徐々に戻りつつあるがまだそう多くはない。そんな中でも「感性のプロセス」を感じさせてくれる仕事は100%以上の結果を残したくなる。

CANONからSONY、再びCANON

5年ほど前、スチールだけでなく、ムービーのオファーも増えはじめた頃からフルサイズミラーレスの先鞭をつけたソニー機を使い始めた。それに伴ってキヤノンの一眼レフ機の出番はスチールのみになっていった。時代はミラーレスに移りつつあった中、開発に遅れを取ったキヤノンからソニーへとシステムを変えるプロカメラマンも多くなり、自分も同じようにソニーがメインになっていった。

だが、この4月、仕事用のメインシステムを再びEOSに戻した。それまでのEOS-5Ds、α7R3、α7S3の複数マウントシステムからEOS R5、EOS R6のキヤノンオンリーのミラーレス体制になった。レンズもそれまでのTS-E 17mm f4L、TS-E 24mm f4L、EF 11-24mm f4Lに新たにRF 15-35mm f2.8L、RF 24-105mm f4Lの2本を加えた。それに伴ってソニーのレンズシステム、ソニー用のストロボシステム、RRSのLプレートなど全て放出した。

特にストロボシステムは念願だったProfotoにチェンジした。それまでソニー機用のストロボシステムにはProfotoの選択肢がなく、昨年、クリップオンタイプのA1Xが出て初めてソニーで使えるようになった。だがその時には別のシステムを運用していてそっくりチェンジするにはハードルが高く、如何ともし難い状況だった。Profotoはチャージのスピード、光量の安定度、発色の良さ等、評判通り素晴らしいストロボシステムだ。

ここまで一気にシステムを交換したことは今まで無かったがEOS R5とEOS R6がスチール・ムービー共に予想以上の完成度だったことに加えてRFレンズの先進性と高性能さ、そして将来性などを感じ、ボディとレンズのメインシステムを一気にキヤノンに戻してしまった。これでスチールもムービーもEOS Rシステム一本で運用することになった。

一気にチェンジした理由は他にもあって現像ソフトCapture OneでのR5、R6への完全対応やRRSのLプレートへの対応など発売直後には対応していなかったことが全て対応したことも大きい。仕事ではカメラとレンズだけあってもすぐに運用できるわけではなく、ソフト面やアクセサリ面も対応してこそのシステムだからだ。

それ以外にやはり新しい機材への高揚感や新たな表現の幅の広がりへの期待感などなど仕事への意欲が増すことが大きい。いまだコロナ禍が続くが機材をアップグレードすると依頼が増えるという今までの経験からするときっと良い流れになるのでは?と期待している。

EOS R5とEOS R6、RFレンズシステムを使い始めて久しぶりに本気になったキヤノンの凄みを感じている。スチール機としての完成度はさすがキヤノンでソニーにはない安定感・信頼感がある。ムービーの性能もボディ・レンズともソニーに追いつきつつあって自分レベルの運用では申し分はない。

写真と動画とRAWデータ

ブログの方が滞ってしまいましたが変わりなく生きてます。笑
ありがたいことに2月から3月にかけてお仕事の依頼が通常モードに戻ってしまった。戻ってしまったというのは不遜に聞こえるかもしれないが昨年のコロナ禍でのゆったりモードからいきなり通常モードへ戻すのは心身共になかなかにハードなので・・それでもありがたいことに変わりはない。

そんな中、2月にジンバルを使った少々変わった動画の依頼があり、これに向けて様々なシミュレーションをしていく中で今までのように仕事の写真とプライベートの写真という感覚で棲み分けて撮り続けていくことが変わってしまった。やはり写真と動画とは似て非なるものでしばらく動画脳でいると写真、特に対極にあるライカを全く使う気になれなくなった。

そんなことで久しぶりにブログに向かったがさて写真は?となった。そこで過去のM8、M9、M-Pで撮ったRAWデータを覗いてみた。便利なことに今はWindowsでも何もなくてもサムネイルのプレビューが可能で過去のライブラリにあるRAWデータの内容を確認しながらダブルクリックするとすぐさまCameraRawが開いて現像できる。

その昔、RAWデータだけは残しておいてソフトが進化した時にまた新たに現像ができるはずと言われていたがその通りになった。仕事のRAWデータは納品が終わればすぐに削除してしまうがプライベート、特にM8以降のデジタルライカのRAWデータは過去13年分を残してある。ということで過去のライブラリから今の気分で現像した桜と菜の花のお写真を。

LEICA M9 / Thambar 90mm f2.2 / 2010.0407 @Chidorigafuchi

LEICA M9 / Thambar 90mm f2.2 / 2010.0407 @Chidorigafuchi

ライカ近況雑感

ライカからまた復刻版がリリースされる。THAMBAR、SUMMARONに続く第三弾だ。今回はライカレンズの中でもレア度は1・2を争うNOCTILUX-M 50mm f1.2 ASPH.!オリジナルは1966年発売の初代非球面f1.2で生産本数は2000本にも満たない為に現在ではとんでもなく高価になってしまっている。ちなみに個人的には同じノクチでも第二世代のf1.0のE58タイプがノクチファミリーの中で一番魅惑的な写りをすると感じている。

今回の復刻版は通常モデルのブラックと世界限定100本!のシルバーでシルバーは普通のユーザーでは手が届かないレアモデルになりそうだ。ライカレンズの珍しいモデルの場合、まずはライカジャパンの優良顧客に声がかかって優先的にデリバリーされることが多々ある。日本に入ってくるのはおそらく10本か多くても20本程度かもしれないのでかなりのレア玉になりそうだ。価格は約200万!でこれも市場ではリリース直後から手が届かないほど高騰するのだろう。

限定モデルは「SUMMARON-M 28mm f5.6」「SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.」「SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.」のいずれも世界限定500本のブラッククロームモデルを所有している。以前よりブラッククロームとレッドスケールに目が無かったので迷わず購入したものだ。その中では「SUMMARON-M 28mmf5.6」が復刻版にあたる。今回の復刻版はブラックの国内価格が約100万!となりそうなのでさすがにおいそれとは手は出ないがブラッククロームモデルが出たら血迷ってしまうかもしれない。

それからつい先日、M10系のファームアップで不可思議な機能が追加された。その名は「ライカ・パースペクティブ・コントロール」と呼ばれるものでライカ曰く、カメラの傾きを検知してコンピュテーショナルイメージング処理を行い、建築写真などに現れるパースの歪みを自動補正するという機能。だそうだ。自分のお仕事的にはドストライクな機能なのだがM型ライカで使う気にはなれない。

自分は普段は仕事でEOS-5DsとTS-E17mm f4LやTS-E 24mm f3.5Lのいわゆるシフトレンズで光学的に歪みを補正して撮影している。実はデジタル的に補正を入れると画質に影響を及ぼすこともある。ゆえにデジタル補正は使用しないことにしている。今回のファームアップ、そういう要望があったのだろうか?M型ライカで何を想定しているのか理解に苦しむ。

百歩譲ってSL系ならばまだ良しと思えるのだが・・・コロナ禍で国内メーカーが苦しんでいる中、超高額な復刻版の発売や理解不能なファームアップなどライカは我が道を往くかの如くで相変わらずユニークなメーカーだ。

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6