お気に入りの公園で土日開催の夜間ライトアップに合わせて星空観察会が行われた。便乗して久しぶりに夜間ライトアップの撮影に公園を訪れた。星空には関心は無かったが観察会を傍で見ていて撮影の合間に参加させてもらった。何基も設置された大型の立派な天体望遠鏡で何十万キロ、何億万キロも先にある月や火星、木星などをじっくり見た。写真にも星景写真というジャンルがあるが観察会がきっかけでちょっと気になりだした。
この日は907xとXCD21mmのみで夜間撮影に臨んでいたが愚かにも?このまま星景も行けるのでは?と。そもそもこのカメラで星景写真など撮っている人など世の中に居るのかな?ハッセルで星景なんて聞いたことが無い。907xで星景撮影の真似事をしてみてこれが意外にも撮影自体は快適なことが分かった。暗い夜間、酷寒の中、手先も凍え、フルサイズミラーレスの小型ボディのモニタやボタン類を操作するのはなかなかの苦行だと想像する。
ところが907xはモード設定用のボタンやダイヤル類は皆無なシンプルボディ。タブレットのように大型のモニタ上で全て済む、しかもこのモニタ、2段階チルト式で非常に見えが良く美しい!それが幸いした。意外だったのは手袋をしていてもタッチセンサーは素手と変わらず操作可能!ハッセルのタッチモニタは凄い!おかげでストレスなく撮影ができた。だがやはりライトアップが明る過ぎて星空の撮影には無理があった。
このレンズ、ピントリングのフィーリングに不満は残るものの描写はただ一点を除いて本当に素晴らしい。残念な点、直線を撮ると歪曲収差が残る。自分の専門分野なのでこの点は厳しい目になる。現像ソフトで補正は出来るが最近は光学性能を追求するよりも後処理のデジタル補正で描写をカバーする傾向にある。最近の各社のミラーレス用レンズはその最たるものだ。
デジタル時代は結果良しならば悪いことではないのだろうがハッセルよお前もか?と残念。星景撮影は開放、高感度、長時間撮影の上、被写体の星は微小とレンズに求める要求度は高い。この21mm、換算17mmと星景には向いてはいるがF4と暗いのが残念。だが僅かに写っていた星を見るとコマ収差等も無く、隅々までキッチリと写っていてとんでもなく優秀なレンズだと再認識した。ハッセル史上最広角レンズは伊達じゃない。
ダイナミックレンジが広い16bit RAWの5000万画素中判センサーの907X。撮影がこれだけ快適ならばレンズ次第では星空写真にチャレンジしてみても面白いな・・・。
SWCへのオマージュ
ハッセルブラッドSWC。フィルム時代の超広角専用機、伝説のカールツァイスビオゴン38mmf4.5を搭載、レンズ交換が出来ない潔いコンセプトとスタイル。そして換算約21mmで歪曲収差ゼロの光学性能。広角好きは誰もが憧れる存在で自分もかつて所有し、ピントも露出も何もかもマニュアルのカメラと格闘していた。
ハッセルブラッドXシリーズの超広角レンズXCD21mmF4は言わばSWCビオゴンへのオマージュ。そのレンズのピントリングがどうにもフィーリングが良くないので本日、原宿のハッセルブラッド東京へ持ち込んだ。ショールームとサービスを兼ねたイメージとして近いのがライカ銀座のハッセルブラッド原宿版だ。
ちょっと不満なことは予約なしでは受け付けてくれないこと。しかも営業日は水曜から土曜。日曜から火曜まではお休み。今風と言うかさすがハッセル様。いずれにしても何か疑問があるとここでしか解決できない。触れる製品がどこにでもあるというシロモノではなく、そこが不便と言えば不便だがそれだけユーザーが少ないということか。
レンズの状態だが購入当時からピントリングが軽くスカスカ。前後に若干のガタつきもあり、他のレンズに比べてどう考えても腑に落ちなかった。いくら電子式と言ってもさすがにおかしい。持ち込んだ結果、これは仕様とのこと。あらかじめ2本の21mmを用意してくれていて比べてみたが驚いたことにさほど違いがない。う~ん、何か納得がいかない。
これが通常の仕様ということは製品自体の考え方はどうなっているのだろうか?Xシリーズのレンズは実は日本の日東光学が作っているメイドインジャパン。光学技術ではその世界では有名らしい。だがXシリーズの焦点距離別の各レンズのピントリングやフィーリングにはリリースされた世代ごとに明らかに違いがある。フィーリングに一貫性がないのだ。これはハッセルブラッド東京のスタッフも認めていた。
光学性能は一流でもレンズ躯体の製造ノウハウや技術に関してはどうも経験不足なのではないかと懐疑的になってしまう。構造的にレンズシャッターも影響しているのかもしれないが日本国内でのユーザーが少なく、こういった情報も極端に少ないので残念ながらハッセルブラッド東京のスタッフに何となくかわされてしまった感が拭えない。少なくとも構造的な説明が欲しかった。
このXCD21mmF4。実際の写りは17mmの超広角になるのだがスクエアにクロップすると印象としてはSWCビオゴンで21mmの画角に見えてくるから不思議だ。写りは換算17mmでもレンズの焦点距離は21mmのパースだからあながち間違っていない気がする。SWCも焦点距離38mmが換算21mmの写りになるので厳密に言えば違いはあるのだが結果としてSWCのイメージで撮れればそれで良いのだ。
ハッセルブラッド東京の帰りに数十年ぶりに竹下通り近辺を散策した。あまりの変わりように完全にお上りさん状態。脇道も増えてあっちもこっちも若者ばかり、その若者向けのクレープやファッション関係のショップがどこも溢れ返っている。中国人以外の外国人も多く、ニュースで良く見たコロナ以前に戻りつつあるようだ。
その後は所用で新宿へ。所用自体が空ぶってしまったので時間が空いて都庁の展望室へ。以前から知ってはいたが機会が無く本日初体験。45階からパノラマ的に都内を一望出来て気分爽快。今日は寒くて空気が澄んで青空が眩しかった。快晴の中で久しぶりのスナップもどきも悪くない。少々フィーリングに不満があってもこのレンズは手放せないかな。
SWCへのオマージュと言いつつボディが907xじゃなければ我ながら説得力がないな。
HASSELBLAD X1D2 50C / XCD 4/21
2022年振り返り
2022年も残すところあと二日。
プライベートでは今年は思い切った断捨離を断行。長年所有していた貴重なロードバイク2台とフォールディングバイク2台を売却。さらにライカのボディ・レンズ・アクセサリーも全て売却した。売る前は少々寂しさもあったが売却後は気分スッキリ。断捨離も悪くない。
特にライカは30年近くパートナーとして常に身近にあって慣れ親しんでいたので相当未練が残るかと思ったが自分でも驚くほどあっけなくサヨナラできた。ライカは本当に素晴らしいカメラだったがレンジファンインダーでのピント合わせが難儀になり、代わりにSLシステムとも思ったがM型以外には食指が動かなかった。さらに使いたいと強く思うレンズも無くなったことも大きな理由。
代わりにハッセルブラッドのXシステムを導入したことは以前書いた。ハッセルは超がつくスローなデジタルカメラだがそれなりにAFも使え、中判センサーのポテンシャルとボディ・レンズの造りの良さ等、ゆるりと付き合っていくにはちょうど良いカメラ。結果として後悔はない。
仕事面ではピーク時に比べて量は落ちたが今の自分には十分なオファーを頂き、ちょうど良い量とペースとなっている。内容も誰もが知るテーマパーク系やエンターテイメント系の仕事が増え、元々自分が目指していたジャンルだったのでフリーランス終盤にありがたいことだと日々感じている。
今の自分の年齢では同期たちは延長雇用も過ぎ、完全にリタイアした者や全く違う職種につく者もいる。そんな中、好きな写真とジャンルでやるべき仕事があること。また、こうして現役を続けられるのもいつも食事やその他を気遣ってくれる相方殿に感謝しかない。
来年も変わりなく、健康で今のペースで過ごせたらと願うのみだ。
ジブリパークの撮影
明日11月1日、愛知県の愛・地球博記念公園に新設されるジブリパークがオープンする。
9月末と10月末、2回に渡ってトータル4日間、第一期工事の3エリア「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の竣工記録写真の撮影で公園を訪れた。
ジブリのアニメと言えば多くの日本人が一度は見た経験があると思う。自分もジブリの世界観は大好きで特にナウシカやラピュタ、トトロなどはリアル世代なのでそれらの作品は何度も観た。ただ、その後の比較的最近の作品は観てはいたけれどあまり記憶に残っていなかった。このお仕事で改めて数本の作品を見直して臨んだ。
今回のジブリパークは一般的なテーマパークのアトラクション的なものは無く、豊かな自然が溢れる公園に溶け込んだアニメのテーマの世界観を再現した施設になっている。パークの詳しいことはYouTubeに散々上がっているので他の方々に譲るとして・・・今回の撮影がカメラマン人生で一番過酷になるとは夢にも思わなかった。
実は9月の撮影に臨む数日前から突然左膝が不調になり、痛みで深く曲げられなくなってしまった。元々左膝は以前から軽い痛みがあったり、抜けた感覚がたまに現れたりしていたのでとうとう来てしまったか?と。広大な公園で移動距離が多くなりそうな撮影で大きな不安を抱きつつ現場へ入った。
想定外だったのが公園内の高低差と階段の多さ、何もこんな時に一番膝にキツイ撮影になるとは。膝が深く曲げられないということは階段の昇り降り以外でも低い姿勢での撮影が厳しいということ。子供向のエリアも多く、自ずと低いアングルとなる。これがかなり堪えた。
今回の施設の撮影ボリュームも今までとは桁違いで3日間の撮影でトータル1万ショットを軽く超えてしまった。手持ちも含むがそれでも1物件ではダントツに多いショット数で初めてメモリーカードが足りなくなってしまい、慌ててヨドバシで買い足す羽目に。スポーツ撮影や飛行機撮影などでは1回の撮影で1万ショットを超えることも多々あると思うが、基本は三脚を使う空間系の撮影で1万ショット超えはなかなか無い。
最終日はアスリートのように痛み止めを飲んで臨んだが、膝の不調、撮影ショット数、重い機材を持ちながらの移動と高低差、カメラマンにとっては邪魔でしかない現場用ヘルメット!土禁エリアでの靴の脱ぎ履きの繰り返し、さらに9月の厳しい残暑!と、ワンオペの自分には三重苦、四重苦で本当に過酷な撮影となってしまった。
そうは言ってもパークの各エリアをほぼ独り占めしながら撮影できることは熱烈なジブリファンから見ればきっと羨ましいことなんだと思う。この仕事の役得でいつもありがたいと感じる。さらに来園者が笑顔でワクワクするそんな施設を撮影できる喜び。これが感じられる限り、どんなにキツくても続けられる。これが自分の年齢でもこの仕事を続けられるモチベーションかもしれない。
ジブリパークは今までのテーマパークとは全く違う方向性の施設で出来れば天気の良い日に時間をかけてゆっくりと公園を散策しながらジブリの世界観を体感する施設。自分も落ち着いたら来園者として身軽な出で立ちでゆっくりと訪れてみたいものだ。と言いつつ楽しみなのが二期工事で完成予定のハウルの動く城の実物大施設の撮影。この城には思い入れがあるので今からワクワクしている。