母の平穏死

先週の21日、6年間入所していた特養ホームで96歳の母親が穏やかに旅立った。老衰だった。先々週の9日に体調が崩れ、その日から食事が取れなくなり、その翌週には水分も取れなくなった。少しづつ旅立ちの準備をし、最後は妹と孫に看取られて静かに息を引き取った。

脳内出血で倒れて30年、半身不随になり、長い間不自由な体でも愚痴ひとつこぼさなかった立派な母親だった。自分がフリーランスになったのは母親の介護の為に会社員を辞めなければならなかったことがきっかけだったが結果的にはカメラマンという天職を与えてくれたことに感謝しかない。

この2週間、私も相方殿も、妹夫婦も、その娘たち夫婦も、そしてひ孫たちも入れ替わり立ち替わり母を訪れていつものように賑やかにコミュニケーションをして十分過ぎるほどのお別れの時間を持つことが出来た。初めての体験だったが穏やかに死を迎える母親をしっかりと見届けるととができて幸せだった。

特養ホームに入所する折、90歳を迎えていた母親に苦しいことや痛いことはもうさせたくなかったのでもし何かあっても延命措置は取らないと伝えていたのでホームの対応も素晴らしいものだった。6年間お世話になって家族よりも親しくなったスタッフや看護士の方々にもたくさん優しく接して頂いた。

母親が旅立ち、ホームを出る朝、多くのスタッフが玄関に整列して見送って頂いた姿には感極まってしまって言葉が出なかった。もしも病院などだったらこうはいかなかった。特養ホーム三井陽光苑で最後が迎えられた母親も私たち家族も最高の時間が持てた。本当に感謝しかない。人が最後を迎える姿はこの平穏死こそ理想ではないかと強く感じた。苦労ばかりの母親だったが見事な旅立ちだった。