村田諒太と井上尚弥

先日の村田諒太のWBA世界ミドル級タイトルマッチは村田の見事な5回TKO勝ちだった。試合前には相手のスティーブン・バトラーは若く連戦連勝のハードパンチャーゆえ前回のロブ・ブラント戦の様にはいかないだろうと感じていた。それが予想を裏切って素晴らしい勝利だった。

今回、驚いたのは村田のボクシングスタイル。以前はアマチュア出身ゆえ、防御中心の手数の少ない右ストレートだけが頼りのアウトボクシングな試合が多かった。それが前回のロブ・ブラントとのリターンマッチでは鬼気迫るボクシングを見せ、初回からガンガン打合い、今までの村田からは想像もできないスタイルで勝利を収めた。

こういう戦い方はモチベーションが高いリターンマッチではよくあるがそもそもボクサーは自分のボクシングスタイルを根本から変えることはなかなか出来るものではない。それがここ2戦の村田は今までの彼のボクシングスタイルとは180度違うボクシングを披露している。それもボクサー人生としては終盤に入るこの時期に見事に変身した。

長年ボクシングを見ているがこんなボクサーは今まで見たことがない。ボクサーにとって決して容易いことではない、それゆえ村田諒太というボクサーからは学ぶべき点が多い。村田諒太と井上尚弥。現役日本人チャンピオンの中では傑出した二人。どちらも謙虚で聡明、練習熱心で真摯な姿勢が素晴らしい。強さも人格も兼ね備えた真のボクサーアスリートだ。この二人をリアルで眼にすることが出来ることを幸せに思う。

LEICA Q-P

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市井の富士

自宅ベランダからの富士。毎朝毎夕望めているがこの光景が当たり前の毎日の中で自分にとっては格別の光景だ。特に風の強い寒い日の富士と秩父の山々を背景にした川越の田舎の風景は美しい。

富士を撮る世の写真家は数多居る。美しい富士を撮る彼らの名作に比べればどうという事のないシーンだが自分にとっては最高の富士だ。息を呑むような美しい富士も良いが市井の中に在る富士が好きだ。

人それぞれ自分にとっての特別なシーンがある。それは他人が見れば必ずしも美しい光景ではないがその人にとっては毎日の中の特別なシーンのはずだ。

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

LEICA M10-P / SUMMILUX-M 50mm f1.4 ASPH.

いだてんは絶品!

大河史上一番の不人気「いだてん」が終わった。昨夜、NHKの大河ドラマ「いだてん」が視聴率低迷の中、1964年の東京オリンピック開会式が成功した場面で最終回を終えた。今回のいだてんは年初から視聴率が上がらず、大河史上最低視聴率も記録した。自分もオリンピックの歴史を中心に金栗四三と古今亭志ん生のふたつのストーリーが時代を行き来しながら展開する分かり難いストーリーに付いて行けず、工藤官九郎も今回ばかりは欲張りすぎて失敗したなとかなり批判的だった。

それがオリンピック初の女子メダリスト・人見絹江が登場する頃から評価がガラリと変わった。その後の前畑秀子に続く日本の女子アスリートの苦難の歴史は国民全員が見るべき価値があると感じた。さらに日本が初めて参加したストックホルムオリンピック、その後のまぼろしの東京オリンピック招致、そして戦後、アジア初の東京オリンピック開催とオリンピックとアスリートの通史を一年かけて丁寧に表現した番組は今までの大河とは違った価値のある大河ドラマだったと思う。

大河ドラマは戦国物じゃなければ視聴率は取れないと言われているらしいが来年の「麒麟がくる」の明智光秀や織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などなど戦国大名ものはすでに語り尽くした感がある。歴史上、真実かどうかも分からない戦国物はいい加減見飽きた。そろそろ大河に対する価値観を視聴者側が考え直す時期に来ているのではないか。また、今年のInterBEE2019で今回の大河ドラマのVFX技術の凄さを目の当たりにし、技術的にも素晴らしい作品でそれゆえもっと多くの視聴者にこの傑作を理解してもらいたかった。

「いだてん」こそは大河史上に残る絶品だ!

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

60の手習い

ここのところ、新たなチャレンジをしている。といっても全く新しい挑戦ではなく動画を一から勉強し直している。きっかけは友人の息子君だ。彼のことはなすしおばら映画祭のことで書いた。彼とは中学生の頃からの付き合いだがたまたま彼の大学受験の前年、彼の父親つまり友人から機材の相談があった。映像の道を目指している彼に今何が一番適しているか?私は即答でSONYのα7SⅡを勧めた。

今から4年程前のことなので当時はまだCanonのEOSムービーもシェアを保っていた。ただ、プロの映像クリエイターたちはSONYに将来性と可能性を感じ、当時、誰もが驚愕した動画性能と高感度性能のα7SⅡへと軒並み機材を変えていた。自分もいち早く購入していた。ただ一般の人たちからみていくら高性能でもボディだけで40万近い価格のα7SⅡは安易に手を出せる機材ではなかった。

プロでもユーザーが少なく高価と感じる機材をまだアマチュアで未成年の彼に勧めるのは正直迷ったが彼の才能と将来を考えるとぜひチャレンジして欲しかった。当時の彼はすでにα7SⅡを使うに相応しい才能の持ち主だった。そこで頑張ったのは父親であるその友人、元々はデザイナーの父親、息子君にも理解があって彼の為にボディとレンズその他を揃えると相当な費用になる機材を則購入してあげた。

その後、彼はα7SⅡを寝るときも枕元に置いて大切にし、優れた映像作品を次々と撮り続けた。大学受験時には彼の作品のクオリティとプロでもまだユーザーが少ないα7SⅡを使いこなしていることで並み居る面接官たちを驚かせたと聞いた。相応しい道具が彼の人生を大きく変え、過日のなすしおばら映画祭へと繋がった。勧めた自分もこれほど嬉しいことはない。

実は彼の作品は公開される前にいつも見せてもらっている。そして意見を求められている。中学生の頃は突っ込みどころ満載だったが今は唸るばかりで彼の才能の豊かさに自分は逆に落ち込み、動画の仕事を受けることを躊躇するほどだった。ただ、ありがたいことにそんな自分もスチールのついでとは言え、動画の仕事が絶えない。

そこで一念発起、初心に帰り、彼をお手本にしながら一から動画を勉強し直そうと日夜ユーチューブに噛り付いている。今は本当に便利な時代になった。ユーチューブには機材やソフトのノウハウが溢れている。若い才能たちの作品も目を見張るものばかり、学ぶべきことが山ほどある。還暦を過ぎた60の手習いだが空間の世界で培った経験を活かせるよう技術をさらに磨きたいと日々励んでいる。

LEICA Q-P

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