ライカレンズが喜ぶカメラ

コロナ禍の中、あえてポジティブに今後の動画の仕事の為にα7S3を発売日に購入した。先代のα7S2も5年前の発売日に手にし、その夜にスカイツリーのクリスマスイルミネーションの仕事にいきなり投入した。先代は超高感度の高画質が売りでまさにイルミネーションの動画にはうってつけだった。その後、後継機が出るまでまさか5年もかかるとは予想だにしていなかった。

デジタルカメラのモデルチェンジは通常2年から3年のスパンでα7S3の5年というのは異例中の異例だ。そのお陰か進化の度合いは驚くほどだった。α7S3というネーミングも実質は2世代飛ばしてα7S5!?と言っても良いくらいだ。α7シリーズのフラッグシップとして6000万画素の高画素タイプのα7R4があるが、α7S3はある部分では超えてしまっている。一気にα7シリーズのトップランナーになったと言える。

動画性能は「仕事のできる4K」という謳い文句だったがその言葉に偽りはない。様々な4Kが目的に合わせて自由自在に表現できる。ただし、PCへの負担は半端ではない。毎回繰り返してきたことだが機材の進化と同時にPC側のアップデートも常に付いて回るのが悩ましいところだ。嬉しい誤算で予想外だったのが写真機としてのα7S3の出来だ。動画専用機のイメージでユーチューバーたちの御用達カメラになりつつあるが実はスチールカメラとしても上質なカメラに仕上がっている。

ひと言で言うとライカレンズが喜ぶカメラ。ファインダーを覗いたマニュアル撮影が楽しくなるカメラだ。現在のミラーレス機の中でも最高峰のEVF性能。高品位で質感の高いボディ、M10-Pにも似た静かなシャッター、画素数競争とは縁の無い程よい1200万画素、相変わらずの超高感度での高画質など、加えて一新したクリエイティブルックの色合いが今までのソニー機とは一線を画している。中でもお気に入りはFLでライカレンズとの相性も抜群だ。5年という異例の熟成期間を要したα7S3の進化はとても好ましい。

SONY α7S3 / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 / CREATIVELOOK-FL

SONY α7S3 / SUPER-ELMAR-M 21mm f3.4 / CREATIVELOOK-FL

軽井沢千住博美術館

千住博氏の作品に初めて触れたのは2010年に開かれた横浜でのAPECの会場だった。それまで氏のことは名前は知ってはいたがバイオリニストで妹の千住真理子氏の兄上ということしか知らなかった。

千住博氏のご兄妹は画家と音楽家のご兄妹で芸術一家としてつとに有名だ。長男で画家の千住博氏、次男で作曲家の千住明氏、そして長女で妹の千住真理子氏のお三方でいずれも芸術性の高い作品ばかりを生み出している輝かしい一家だ。

2010年に横浜で開催されたAPECの会場で千住博氏の作品群が各国首脳を迎える空間を彩った。その会場記録写真の撮影で実際に氏の作品の数々をカメラに納め、たまたま最終チェックに訪れた氏をお見受けして上品で偉ぶらずに自然体のやり取りを垣間見てそのお人柄にも感銘を受けた。その時に初めて氏の作品を間近に拝見して感動し、その後は氏の作品を意識するようになった。

その千住博氏の美術館がAPECの翌年の2011年に軽井沢に開館して静かな人気スポットになっていた。今年の3月、氏の主要作品が各地の巡回展などを終えて2年ぶりに戻り、ほぼ全てが揃い、かつこの10月限定で一部のエリアでの撮影可という願ってもないタイミングが訪れたのですぐに伺った。

ウェブの評判や写真などでは感じられなかった美術館の独特の空間はとにかく素晴らしかった。ここで詳しく語り、伝えることは難しいが軽井沢の立地と自然と作品とを上手く組み合わせたランドスケープ的でかつリビング的な空間はいつも空間に接している自分が見ても静かな感動を生む素晴らしい空間だった。

作品は氏の若かりし頃の作品からなぜ滝=ウォーターフォールをモチーフにしていったか?から現在の崖シリーズへと続く変遷が一望できて居心地の良い空間で氏の作品群が体感できる。
ご興味のある方はぜひ!軽井沢千住博美術館
※12月末から2月末までは冬季休館になりますのでご注意を。 

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

LEICA M10-P / SUMMARON-M 28mm f5.6

HONDA F1 PROJECT

数日前、F1ファンの間で激震が走った。ホンダのF1プロジェクトが2021年の来シーズンで参戦終了というアナウンスがあり、その直後からSNS上ではホンダへの誹謗中傷、罵詈雑言の嵐となった。批判内容のあまりの酷さにさすがに気分が悪くなった。ある方のツイッターではあまりのショックに「悲しみを超えて怒りになってしまっている」と。確かにそんな状況だ。今まで長きに渡って多くの感動を我々に与えてくれたことは無しに等しい発言がほとんどだ。

冷静によく考えてもらいたい。F1はそもそもヨーロッパの自動車文化から生まれ、現在もメルセデス、フェラーリ、ルノーが中心でホンダは異端という立場は初参戦の時と変わらない。八郷社長は表向きは前向きなビジョンを語っていたがあれは建前で実情はそうではないと思う。あの発言だけを取って批判することは今までのホンダの貢献を蔑ろにする行為だ。

そもそもホンダのF1プロジェクトは本田宗一郎氏の頃の第一期のチャレンジから現在の第四期のチャレンジまでコンセプトは変わらない「F1は走る実験室でそこから生まれた技術を市販車にフィードバックする」だ。さらにエンジンサプライヤーとしての参戦自体は広告宣伝効果以外のメリットはない。当初から利益を度外視した姿勢は他のヨーロッパのコンストラクターとは異なる姿勢だ。

ゆえに参戦を繰り返すこと自体を非難するのはこのあたりが理解できていないということだ。冷静に見れば利益を考えないプロジェクトマネージメントはかなり問題はあるが自動車文化後発のアジアから参戦するということはヨーロッパのメーカーと単純に同列で同じ土俵には上がれないということだ。今でもそう変わらない訳で目には見えないハンデは相当あるはずでそれは我々には計り知れないことだ。

それでもハンデを乗り越えて何度も何度もチャレンジして我々に夢を見させてくれたホンダを誇りに思う。中でも第二期の黄金期と評される16戦15勝!という空前絶後の記録もどれほどのファンが狂喜して感動したか。今回の撤退はその栄光まで消えるものではない。我々に数えきれない感動を与えてくれたホンダを感情に任せて短絡的に批判する資格は誰にもない。

マーケット的にもヨーロッパ圏での四輪販売数は北米の10分の1以下というのはよく知られていてF1は撤退してインディは続けるのか!という連中もそのあたりの事情も少しは理解すべきだ。その上、世界中に20万人以上の関連従業員が居て多くの株主も存在する。高級車志向のメルセデスやフェラーリ、ほぼ国営と言っていいルノーとは異なる言わば普通の自動車メーカーだ。レースはDNAと語るホンダにとって今回の決断は苦渋の決断だったと思うし、企業としては間違った判断ではない。

批判する連中はあたかもホンダが今すぐF1から撤退するかのような勢いの罵詈雑言の嵐だが来シーズンは継続される。まだチャンピオンの可能性もある。レッドブルやアルファタウリを裏切ったという輩も居るがF1界は水面下では何が起こっているかは一般人では計り知れない世界だ。また2022年以降のレギュレーションではエンジン開発が凍結される。走る実験室・人材育成を目標にするエンジンサプライヤーのホンダにとってメリットはほとんどない。

2チームとの契約も2021年まででビジネスモラル上でも何ら問題はない。徐々に分かってきた情報では随分以前からレッドブルもアルファタウリもホンダの撤退の事情を承知していたらしい。その上で今回のホンダの決断を支持している。シロウトの憶測と思い込みだけでSNSの勢いに任せて言いたい放題の文句を言っているのは日本人の無知なファンだけだ。もっと冷静になれ!と言いたい。

世界中を見渡しても利益を度外視して数百億のプロジェクトに果敢にチャレンジし、ファンに夢を与えてくれるメーカーなどどこに存在するのか?それが自国のメーカーなのだからもっと暖かい目で見守るべきだ。何度も参戦と撤退を繰り返して裏切られたと言う輩が多いがそれは全くの筋違いの言い分だ。自分は今まで半世紀以上に渡って多くの夢を与えてくれたホンダに感謝しかない。

何度もチャレンジして夢を与えてくれた自国のメーカー、ホンダにもっと敬意を持つべきだ。批判している彼らも冷静になれば来年の鈴鹿に多くのホンダファンと共に集まると信じている。もちろん自分もその中の一人だ。

LUXURY FLIGHT

若かりし頃、エアラインパイロットに憧れて真剣にチャレンジしたことがあった。チャレンジは残念な結果で夢は叶わなかった。そのお陰で今の天職とも言える仕事に就けたのだから人生は分からないもの。今では熱烈な飛行機ファンと言うほどではないが好きなことに変わりはない。

その夢を自分のバースデイプレゼントとして相方殿の心遣いでちょっぴり叶えてくれた。羽田空港第一ターミナルにある「LUXURY FLIGHT」というフライトシミュレーター専門の有料施設で60分ほどだったが羽田~成田間のフライトを体験できた。大昔、フライトシミュレーターは数億?もするシロモノで本職のパイロット以外には縁の無い世界だった。

それが今やプロのパイロットが訓練にも使用できるフライトシミュレーターが一般人でも体験できる時代になった。初フライトでぜひとも体験したかったのが離着陸体験。6軸モーション付きのボーイング737MAXでシミュレーターとは言え、普段使用している羽田空港や成田空港の離着陸体験は臨場感があって最高だった。

実際に操縦するのは予想以上に大変でまともな離着陸など想像をはるかに超える困難さ。航空機が空中を飛んでいることが如実に理解できる。最初は上下左右全くコントロールできず、あっちへ行きこっちへ行きを繰り返してしまう。隣のコ・パイロット席の現役パイロットのサポートで何とか飛べる状態。

最後は少々慣れてきて着陸もサポートされながらもどうにかこうにか降りることが出来た。いい歳をしたジジイが我を忘れて夢中になって非常に面白かった!昨日の羽田空港はコロナ禍と台風接近に伴ってガラガラ状態。国際線ターミナルなどはほぼ無人状態。これもシミュレーターと合わせて貴重な体験だった。

LEICA Q-P

LEICA Q-P