感謝の意味

「CP+のステージに立つことが夢だった。ここが写真家としての最高のステージ。ここに居る全てのスタッフに感謝。」

才能豊かで素晴らしい風景写真を撮り、ブレイクする前から類稀な才能に注目していた写真家の言葉だ。違和感以外に無い。何のために風景を撮り、誰に伝えたいのか?そして何を残したいのか?今一度自分が写真を撮る意味を考え直したほうが良い。

メーカーや代理店のご都合主義で苦労して撮った作品を乱用され、PRに担ぎ出され、身勝手なコマーシャリズムに利用され、有名人になったかのような錯覚を持たされ、用が無くなれば使い捨てられ、忘れられていく。こんなこともその渦中に居ると気付かず、冒頭のような言葉を吐いてしまう。

CP+のステージに立つな、という意味ではない。節度を持って立ち、自分の目指すべきものを見失わずに発言してもらいたいものだ。言葉は言霊とも言う。驕りや勘違いは発する言葉から始まる。本来、感謝すべきは素晴らしい作品を撮らせて頂いている大自然とそこに立ち合わせて頂けた幸運ではないだろうか?そして何よりその作品を愛して下さった方たちではないだろうか?

LEICA Q

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見習いたいこと

毎年初日には必ず行っていたCP+。今年は仕事が詰まっていて全く行くことが出来なかった。メーカーの担当者と直接話が出来る機会であったり他のプロの方々の独特なお作法などは勉強になるので時間を作りたかったがお仕事優先のフリーランスとしては致し方ない。中でも今年は三澤武彦氏がお話をされるということだったのでどうしても伺いたかったが本当に残念だった。

三澤武彦氏は私が尊敬する数少ない?プロの写真家で結婚式や家族写真・出産後の人々の撮影を専門としていてとりわけ結婚される前のカップルを独特の撮影手法で少し照れた中にも輝くような笑顔の写真をたくさん撮られている。数年前、新宿のエプサイトで写真展をされていた折、一度だけお会いする機会があってどうしたらあのような写真が撮れるのか?撮影助手として立ち合わせて頂きたいくらいだとお話すると大変謙遜されていたことを記憶している。

写真は撮影者の人柄が出るというがやはりそれは真実だ。特に人などを撮る場合は如実に現れる。三澤氏の写真は氏のお人柄で撮っているとも言える。翻って自分の場合はどうか?被写体は違えどもそこには空間を創った人々が存在する。自分はその創った人々=デザイナーやディレクターやスタッフの方々とどのように接するか?現場の空気をいかに自分が撮りやすい空気にするか。この良し悪しが結果に繋がると感じる。

コメディアンの高田純次氏が歳を取ったらやってはいけない三つのこと「昔話」「自慢話」「お説教」と語っている。高田氏は10歳ほど年上だが私くらいの年齢になるとどうしても犯しやすいことばかり。自戒を込めてこの言葉をこころに刻んでいる。それに加えて相手の肩書き・学歴・年齢などは出来るだけ取り払ってひとりの人として誠実に接すること。これらを出来るだけ守るようにしている。

だが、三澤氏のようにその場の空気を掴んで和ませて素晴らしい写真を撮るような境地には至っていない気がする。まだまだ見習わなければならないことがたくさんある。

LEICA M-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

LEICA M-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

魅惑のレッドスケール

現行のライカMレンズの指標はシルバー以外はイエロースケールが標準だ。これはM6・M7時代のシャッターダイヤルの指標がイエローの為、それとマッチさせたと言われている。だがMデジタル時代になってシャッターダイヤルは赤指標になったにも関わらず、相変わらずブラックタイプはイエロー指標を続けている。些細なことだが軍幹部とレンズ指標は撮影中は常に目に入る部分。シャッターダイヤルのレッド指標とレンズのイエロー指標のミスマッチ感は気になってしまう。

M3やM4時代ではボディもレンズもレッドスケールが標準だった。デジタルのM8、M9やM、そしてM10も今はレッドスケール。ボディに合わせてレンズもレッドスケールの方がマッチしているし、より美しいと思うのは私だけだろうか?このズミクロン35mmは現行のひとつ前のモデルだが限定のブラッククロームの発売と同時に購入した。理由のひとつがレッドスケール。さらに今のMデジタルのブラックペイントはM6やフイルム時代のMPのブラックペイントとは艶や質感が違っていてむしろブラッククロームの仕上げに近い。ゆえにレッドスケールのブラッククロームレンズとMデジタルとの組み合わせはとても美しい。

自分のLEICA Qはチタングレーだが実はこのチタングレーの指標もレッドスケール。ショップでブラック購入直前にこのレッドスケールにノックアウトされて急遽チタングレーに変更したもの。そもそもスケールの色などは撮影行為とは直接関係はないが気に入ったデザインの美しい道具はこころを豊かにしてくれる。趣味の世界ではそんなこともあっていいと思う。

LEICA M-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

LEICA M-P / SUMMICRON-M 35mm f2.0 ASPH.

開放で捉えたイタリア

昨夜、高橋俊充氏の写真展に伺った。イタリアのスナップとクリエイターたちのポートレイト、そしてゼラチンシルバープリントによるモノクロ銀塩プリントと盛り沢山。さらに超絶クオリティの写真集「ITALIA SNAPS 2010-2017」。写真集はやはり予想以上の出来栄えで、装丁の考え方、細やかなデザイン、写真のクオリティ、これほどの写真集にはなかなかお目にかかれない。

高橋氏の撮るイタリアのスナップ。個人的に特に好きな作品は35mmや50mmレンズで被写体を中間距離で捉えた開放描写での作品群。近づき過ぎずに適度な距離感で捉えた被写体の周囲を包む前後のボケが生み出す空気感。ピントの合った被写体以外の描写の曖昧さが見る人にイタリアの空気を感じさせる。さらに北陸育ちの色彩感覚とも言える抑えた彩度と強めのコントラストが氏の独自の世界観を創り出している。

その世界観が見事に表現されているのが今回の写真集。期待以上の出来栄えで手に取る度に唸ってしまう。表紙と裏表紙にもその開放描写での作品が使われている。例えれば高名な美術館での貴重な作品カタログ並みの出来。一般の出版社が作る並みの写真集ではこれほどのクオリティは体験できない。それにも増してこの写真展と写真集に関わるほぼ全ての費用が自前ということ。

真のクリエイターは本来自分の目指すべき世界を実現する為にはスポンサーやパトロンなどに気を遣わず、思い通りに創ることが理想であり、それが結果的には良いモノを生み出すことに繋がると思う。サポートされることが当然と考える昨今の一部のプロたちにも少しは見習って欲しいものだ。ちなみにこの写真集、二冊購入して一冊は写真集として、一冊は一枚一枚を額に飾る写真としても成り立つほど印刷クオリティが高い。おそらく氏はそんな使われ方には同意されないと思うが・・・

LEICA Q

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